特集 供養葬 新たなお別れのかたち

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特集 供養葬 ~新たなお別れのかたち~

供養葬とは、新しく誕生した葬儀の形式です。

ニーズが増えつつある供養葬の特徴を解説します。弔いや供養の大切さについて考えてみましょう。

供養葬という新たな葬儀とは?

基本的に葬儀の規模は、直葬・家族葬・一般葬に大別できます。さらに細かく分類すると、一日葬・無宗教葬・音楽葬・社葬・骨葬などがあります。

直葬・家族葬・一般葬と供養葬の特徴を表にしました。

形式 葬儀の流れ 規模 式場 祭壇
直葬 安置
火葬
近親者のみ × ×
供養葬 安置
火葬
お寺の本堂
近親者のみ × ×
家族葬 安置
通夜
葬儀・告別式
火葬
家族・親族
親しい友人
一般葬 安置
通夜
葬儀・告別式
火葬
家族・親族
会社関係
近所
(補足:自宅や病院で亡くなった後に自宅か安置施設遺体を安置します。また、家族葬でも人数が少ない場合はの周りに花を飾り、祭壇を組まないこともあります。)

供養葬では、火葬後にお寺の本堂で通夜、葬儀・告別式の分の読経もあげて、手厚く供養します。宗派によって、臨終のあとの枕経、通夜のお経、葬儀のお経の内容が違い、それぞれに意味があります。

特徴その1:費用を抑えることができる

供養葬は式場の手配や食事、祭壇を用意する必要がありません。葬儀費用の中でも祭壇費用というのは、葬儀社へ支払う費用の約50%を占めるため、その部分の負担がなくなるのは大きいでしょう。

特徴その2:手厚い供養ができる

火葬後にお寺の本堂で通夜・告別式分の読経をあげ、手厚く供養を行います。供養葬は本堂で供養するので、お寺へのお布施以外で式場費がかかりません。

直葬の場合は、火葬炉前で読経することが多いです。ただし火葬場によっては、火葬炉前での読経や面会のお別れの時間を取ることが難しい場合があります。

自宅で安置できるのであればお別れの時間をもつことはできますが、自宅での安置が難しい場合は、直葬では供養を省略せざるを得ません。 また、身寄りがいない方は安置施設での安置になる可能性が高いでしょう。

いかなる理由があっても、直葬では供養が手薄になってしまうことが多かったので、供養への思いがある人にとって供養葬は最適なお別れのかたちになっています。

実相寺(港区)の本堂
写真:実相寺青山霊廟(東京都港区)の本堂

供養葬は、死を軽んじたり、費用を抑えたい方が増えてきたから誕生した選択肢ではなく、金銭面や故人を取り囲む環境の変化に応じて生まれた新しい葬儀のかたちなのです。これからの社会で不安を軽減するための選択肢になると考えられます。

供養葬が誕生した背景

最近では、都心部を中心に葬儀規模の縮小が見られます。(参照:第2回 近年の葬儀の傾向とは?

  • ご近所付き合いがない
  • 現役を引退してから時間が経っているため参列者が少ない
  • 一般葬だと費用面・精神面で喪家の負担が大きい
などの理由から、家族葬を選ばれることが増えています。

一方で直葬は、
  • 参列者が高齢で2日間のお別れは体に負担がかかる
  • 身寄りが少ないため式場を借りることへ抵抗がある
  • 長期の介護や治療でお金がかかり葬儀費用の準備が難しい
などの理由で選ばれます。

直葬を選ぶ方のなかには「費用はないけど、きちんと心を込めてお別れしたい」という方も沢山いるでしょう。

金銭面で十分に見送れないことを悩んでいる場合や身寄りがおらず、成年後見人や知人が見送る場合に供養葬が選ばれる傾向にあります。上記のような社会的変化の中、どんな状況下の人々でも供養をきちんとできるお別れのニーズに沿ったお別れのかたちということで選ばれるようになりました。

供養葬はこのような喪主におすすめです

  • 急な葬儀で費用が工面できないが、心を込めてお別れしたい
  • 身寄りがおらず、成年後見人である知人や縁者が見送る
  • 高齢のため、参列者が少なく式場を借りるほどではない
  • 参列者も高齢で身体的に負担を軽くしたいが、供養は手厚くしてあげたい

供養葬で気をつけたいことは?

供養葬はまだ新しい考え方なので、全国的に浸透している文化ではありません。お寺によっては抵抗をもたられる可能性もないとはいえません。そこで、供養葬で気をつけたいことはお寺への相談です。

菩提寺がある

事前に相談ができる状況ならば、早い段階で供養葬という新しいかたちでお別れ考えていることを相談しましょう。緊急の場合も、まずはお寺に供養葬で執り行いたい旨を話しましょう。

菩提寺に対して、これまでの先祖供養への感謝を伝え、どんな思いで供養葬を選ばれたか伝えて相談しましょう。

菩提寺がない

葬儀社に供養葬というかたちでお別れしたいことを伝え、希望の宗派で供養葬への理解があるお寺を手配してもらいましょう。

人の死を弔い、供養の心を大切につないでいく

そもそも、どうして通夜、葬儀・告別式を執り行うのでしょうか。

諸説ありますが、通夜、葬儀・告別式には故人との別れの時間をしっかり持ち、向き合い、別れを受け入れ、故人を偲ぶための時間です。

仏教における通夜は、縁者が葬儀までの時間、故人を静かに見守り、夜を通して故人を偲ぶためにあります。その中で故人を供養するための読経があります。

葬儀では、故人と縁の深い方々が念仏の心で故人の冥福を祈ります。そして、僧侶引導を渡します。告別式は一般の会葬者焼香礼拝することをいいます。最近では葬儀・告別式と一括りにしてあることが増えてきました。

通夜・葬儀で読経をあげてもらい、故人が安らかに眠れるように手厚く供養していたのです。時間をかけて丁重に見送ることは故人のためだけではありませんでした。自分自身の心を整理させ、大切な人の死と向き合うことができる貴重な時間(場)となります。

最後に~葬儀で大切なこと~

社会は常に変化していて、家族の形態に合わせ、葬儀の形式や供養の仕方が変化してきています。

葬儀を簡素化することがいけない、ということではなく、故人を思う気持ちの部分をぜひ大事にしてほしいと思います。

どんなかたちであれ、大切な人の死と向き合うことは、自分自身の心を整理させ、自身のことを根本的に見つめ直す機会になるでしょう。

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