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葬儀後に始まる相続手続き。
中でも、財産の相続についてはわからないことも多い中で手続きの期限が決まっているため、不安や負担を抱えてしまいがち。
今回は、全国規模で法律事務所を構える「ベリーベスト法律事務所」で相続手続きを担当している田渕朋子弁護士監修のもと、相続でもめる事例とその解決方法や費用・期間について詳しくご紹介します。
家族構成:母は先に亡くなっており、今回父が亡くなった。自宅や現金を含めて財産は6000万円程度。
自筆証書遺言が自宅に残されており、長男と長女には財産を半分ずつという記載があったが、自分(次男)については言及されていなかった。
相談:高圧的な父と自分は喧嘩が絶えず、ずいぶん前に家を出ていました。ただ、母とは連絡をとっており、母が入院した際には母から連絡があり、高齢の父が看病してくれそうにないと相談を受けた。
母のために病院にほぼ毎日通って自分なりに親孝行をして、忙しい兄弟の代わりに母を支えたつもりでいました。
財産の分配について姉の理解は得られているものの、兄は遺言書通りの遺産分割を譲りません。遺言書の内容に納得がいかずどうしたらいいのかと思っています。
相続について、有効な遺言書がある場合には、基本的に遺言書の内容通りに相続財産を分けることになりますが、法定相続人全員で話し合って、全員が同意すれば、遺言書と異なる内容の遺産分割を行うことができます。
今回の場合、亡くなったお父様(被相続人)が自筆証書遺言を残していました。一般的には遺言書がある場合は、「相続財産を誰にどのくらい分配する」と指定されている遺言書の内容に沿った分配が基本的に行われます。
ただ、配偶者に何も残さなかったり、子どものうちの1人だけに何も残さないなど、身近な親族のことを全く無視したような、極端な相続財産の分配が記載されている遺言書の場合、必ずしもその通りになるというわけではありません。
遺言書は内容について本人の希望を自由に書くことができます。そのため、今回の事例のように極端な相続内容が記載されていることもあります。
今回のように「相続人が3人いる状況で相続人2人が全財産を等分し、残りの1人にはまったくなし」という内容の遺言でも必ず実現させなければならないというのでは、不平等な相続になるので、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人には、一定の相続財産が確保できるように、「遺留分」が認められています。
この権利にもとづいて、配偶者・子ども・直系尊属といった、被相続人と密接な関係を有していた法定相続人は、「遺留分」を侵害するような遺言がなされたばあいには、その遺言で財産を取得した者に対して、遺留分を侵害する額に相当する金銭の支払を請求をすることができます。
今回の場合、兄・姉に対して次男が遺留分を確保するための申立を行うことができます。これは専門用語では「遺留分侵害額請求」と言われる手続きです。
まずは相続人同士(兄弟3人)の話し合いによって、不平等な相続内容を解決します。
遺留分について話し合いがまとまらなかった場合、裁判所に調停を申し立てて、調停委員に中に入ってもらって話し合うか、訴訟を提起して争うかという ことになります。
遺留分侵害額の請求は、遺産分割とは異なり、調停がまとまらないときには審判に移行して、家庭裁判所が分け方を決めてくれることはありません。調停で話し合いがまとまらないときには、調停は不成立で終了し、改めて侵害額の請求をする者から訴訟を提起する必要があります。
相続人同士での遺留分の話合いがうまくまとまらない今回のようなケースの場合だと、遺留分侵害額の請求調停申し立てを、相手方(今回は兄または姉)の住所地を管轄している家庭裁判所に行うことができます。
「調停」や「申し立て」と聞くと、身構えてしまいますが、相続人同士が納得の上で合意できるように家庭裁判所が仲介役をしてくれるので、当事者同士で解決の糸口が見えないまま、事態が深刻化する前に知っておきたい選択肢です。
尚、調停で決まった事項は調停調書に記され、法的な拘束力があります。このため、後々のトラブルを防ぐ効果もあります。
手続きの流れの概略は以下の通り。
[1]家庭裁判所に調停申立書を提出*手数料納付
(調停申立書が適法に受理されると、第一回期日の通知とともに相手方に送られる。)
↓
[2]調停期日に出頭
↓
[3]調停の成否(成立の場合は【4】、不成立の場合は【5】
↓
[4]調停調書の作成
↓
[5]不成立により調停終了(訴訟により決着を付けたい場合には、改めて地方裁判所に訴状を提出する。)
遺留分を考慮して遺産をどのように相続するのか?という問題をきっかけに争続となり、それまでの関係が壊れてしまうケースも残念ながら少なくありません。
「もっと他に違うやり方があったのでは?」と後悔したり、2度と顔も合わせられないほど関係が悪化してしまう前に法律の専門家である弁護士の力を借りる選択肢も考えましょう。
また、調停の結果に納得が行かない場合は、改めて訴訟の手続きを行うこととなります。
その場合も弁護士に相談をして、「相続をどうしたいのか、どんなところに納得いっていないのか」を伝えて、できる限りの解決方法を法律の専門家にアドバイスをもらいながら解決していくと本人の精神的な負担などが軽減されます。
などのメリットがあります。
遺言書には種類があり、代表的な遺言書といえば「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。
自筆証書遺言はいつでも自分1人で書き始めることができ、基本的には費用がかかりません。ただ、複数の財産を所持している、財産の分配を複雑に行うなどの場合は、弁護士や司法書士などの士業に法的に有効か確認してもらうとより確実です。
内容が不明瞭であったり、記載にミスがあると遺言書が無効になります。
また、保管場所を明確に相続人に伝えておかないと、発見されないまま相続が進んでしまうことも起こりえます。(令和2年7月10日から遺言書保管制度が実施されるので、自筆証書遺言を法務局で保管してもらうことができるようになります。)
一方、公正証書遺言は、公証人に本人の希望を書面化してもらい、公証役場で保管されるため記載の内容も保管も確実です。一方で費用がかかります。(弁護士費用の目安としては10万円~ですが、財産内容に応じた公証役場に支払う費用が別途かかります。)
今回の事例にとどまらず、「愛人がいるので自分の財産は全てその人に」「宗教団体にお世話になったので全財産はその団体に寄付」なども極端な事例と言えます。
こうなると、残された家族は相続できるはずの財産を侵害されたことになり、「納得いかない」となるのも仕方のないことです。
こういった極端な遺言書内容による不平等な相続について、日本では適正な相続財産の分配がされるよう、相続人に最低限の財産の確保を認める「遺留分」と呼ばれる仕組みがあります。
遺留分(いりゅうぶん)とは、相続人が最低限の財産を受け取れる保証がされた仕組みのことです。
亡くなった人(被相続人)の兄弟姉妹以外の相続人は、財産の一定割合を相続できる権利(遺留分権)があります。
遺留分には一定の割合が定められており、表にまとめました。
今回の事例だと配偶者はすでにおらず、子のみの場合なので遺留分の割合は1/2です。
この1/2を兄弟3人に等分した遺産全体の1/6が相談者が遺留分として請求できる割合となります。
具体的にみると、
6000万円×1/6=1000万円
が相談者が相続する権利のある遺留分にあたります。
この金額を他の相続人である兄弟に請求(遺留分侵害額請求と言います)することができます。
今回の事例では子供1人の遺留分は、遺産全体の1/6になりました。
ただ、そもそもの遺言書内容の確認、遺留分の正式な金額を導き出す計算、話し合い、遺留分侵害額請求など自分たちで行うには荷が重いと感じる人もいらっしゃるでしょう。
遺留分侵害額請求は裁判の手続きが必要になる場合もありますし、期間制限もあるので、遺留分に該当する財産の相続をできるだけ確実に行いたい場合は、早くに弁護士に相談することをおすすめします。
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定年退職のこと
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