定年を前に考える、50代からの転職に必要なもの

最近の就活市場は「売り手市場」と言われますが、50代前後やそれ以上の方についても当てはまるのでしょうか。

また、「一億総活躍時代」などとも言われますが、採用する企業側の反応や受け入れ体制はどうなのでしょうか。

働くということは、「生活の糧を得る」というだけでなく、「生きがいを得る」と言う意味でも大きな役割を持ちます。

定年後の人生や老後を考える上でも、就活市場の現状を知っておいて損はないはず。

そこで、人材紹介会社のミドル・シニアの就活に詳しい方にお話を伺い、50代前後やそれ以上の方の最新就活情報をあぶり出す「定年を前に考える、50代からの「働く」」をテーマに連載でお届けします。

第2回目は、パーソルキャリア株式会社DODA編集長 大浦征也氏にお話を聞きました。

定年前50代からの転職

まずは「自分の棚卸し」から

「現在の有効求人倍率は、厚労省から出ているもので1.56倍。転職サービス「DODA」が出している転職求人倍率では2.46倍となっています。有効求人倍率1.56倍とは、転職したい人に対して1.56件の求人があるということです。もちろん年齢、職種、スキル、経験、本人の希望によって求人数は変わります。比較的、年齢の高い転職者は増加傾向にあります。ただ、同条件で転職活動をした場合、40代の転職成功者は、5年前と比較して6倍になっていますが、50代以上は、40代に比べると少ないというのが現状です」

50代前後やそれ以上の方と、20〜30代の方の転職活動に違いはあるのでしょうか。

「本来違いはないはずです。しかし、日本はキャリアで転職する時代から、スキルで転職する時代に大きく変わってきています。50代前後になると経験に目が行き、スキルが分かりにくくなるため、『自分の棚卸し』をするのが若い人より難しいという傾向があります」

キャリア型の転職とは

どこの大学を出てどこの会社に入って何を経験したか。現状、履歴書や職務経歴書に書くようなことを活かした転職を指します。

スキル型の転職

在籍していた大学や会社ではなく、学んだことや働いた実績、何を学んでどんな製品をどんな方法で売ったのか、どんな考え方をするのかなど、職務経歴書をもっと深掘りした内容が問われる転職です。

「また、産業構造は急速に変化し、複雑化しています。例えば商社が金融の人を、自動車メーカーが電気業界の人を、アパレルがITの人を採用しなければならなくなるなど、産業が明確に区別されなくなってきました。そのため、キャリアでのみマッチングするのではなく、スキルを重視する動きが加速しています」

本質的にはスキルを重視するべきですが、長く働いていて能力や経験があるからこそ、「何がスキルなのか」「自分の武器が何なのか」が分かりづらくなっていくようです。

「転職はもともと、人との繋がりの中で信用担保があって実現するものなので、今まで培った人脈や経験、知り合いの中で転職をすることが多い。そういう意味では、年配になればなるほど転職活動の方法は複雑性を増しているかもしれません。だからこそ必要なのが『自分の棚卸し』だと思います。ある意味培った人脈もスキルの一部と言えます」

複雑ゆえに、「何がしたいのか」「何ができるのか」など、一度まっさらなところから自分と向き合う必要があります。

「一般的に50代前後やそれ以上の方は、固定観念やプライドなど、守らなければならないと思っているものが少なくなく、意識を変えられない方もいます。そういった方は、自分の思考範囲を棚卸して確認すると良いでしょう。長く経験しているということは、それしか分からなくなっているという可能性があるからです」

逆に、「自分ができないこと」や「絶対に手放せないもの」を探す作業が「自分の棚卸し」なのかもしれません。

「なぜ働くのか」「何のためにそうするのか」

50代前後やそれ以上の方にとって難しい「自分の棚卸し」。どういう手順で行えば良いのでしょうか。

「まずは、『なぜ働くのか』ということを考える。50代で転職を考えるとしたら、『今後どのくらい働くべきなのか』『何がやりたいのか』と考えると、そんなに気張って働かなくてもいい人もいると思います。子どもの独立が見えて、家のローンも完済できそう。不動産的にも価値が出てきた。生活の再構築を行う場合は、この先どのくらいのリズムで働くべきなのかをしっかり考えた上で、転職活動を始めた方がいいと思います」
定年前、50代からの転職
50代前後やそれ以上の方は、画一的な職業観で生きてきた方が少なくありません。

「年収は落としたくない。過去の経験を活かしたい。子育てや住宅ローンを抱えた若い頃の意識のまま、転職活動をしている方が多い気がします。『何のためにそうするのか』。子どもが独立すれば郊外や田舎へ移ることもできます。都心より広くて良い家に住めて、場所によっては求人の多い地域もあります。自分らしい生き方を徹底的に考え、その上でやはり働かざるを得ないのであれば、妥協してまで転職するべきなのかどうかを考えます」

固定観念や過去にとらわれず、とにかく自分と向き合うこと。

今後の日本では、50代前後やそれ以上の方のパワーが必要になってきます。業界や産業を支えてきた自負があるなら、今の日本を支える何かができると思います。例えば、物流業や倉庫業は革新が進み、不動産管理の領域では新しいものを建て続ける時代が終わり、リノベーションやハウス内コミュニティの時代に変化しています。このような変化に合わせた形で、50代前後やそれ以上の方だからこそできる役割があるはずです」

生活のメリハリや生きがいを重視した転職を目指すなら、正規雇用にこだわる必要もありません。

「正規雇用にこだわって選択の幅を狭めるよりは、スキルややりがいを重視して選択した方が、就職できる可能性が広がります

若い労働人口は減り続けるため、50代前後やそれ以上の方を採用する企業は増えていくはずです。「自分の棚卸し」をしっかりと行えば、自ずと希望の範囲も広がり、結果的に後悔のない選択をすることができると思います。

ミドルやシニアの転職に必要なもの

一億総活躍社会といわれますが、実際にミドルシニア層の方が転職活動をする際には、他の層の求職者に負けないように、採用される可能性を高める努力や工夫も必要になってきそうです。

「企業の中には、50代前後やそれ以上の方は、年下の上司の下で働くことや正規雇用でない働き方には抵抗があり、柔軟性に課題があるのではないかと考えているところもあります」

スキルや経験の有無だけでなく、考え方や人との関わり方などの学び直しの機会や場が世の中に必要になってきます。

「実はすでに、40代前後の社員に対し、社内研修としてコミュニケーションに関する学び直しの場を設けている企業が結構あるんですよ。私は、シニア層の方が、また新たに輝ける環境に転身する機会づくりのサポートをしていると、前向きに捉えています」

長年同じ環境の中にいると、感覚が麻痺してしまいがちです。そういう意味では、企業側がシニア層の学び直しの機会や場を提供するのは良いことだと思います。

「基本的には、労働者の流動化は必要だと思います。今後、50代前後やそれ以上の方で自発的に転職したい人が増えて、そういった方を採用して良かったという企業が増えれば、50代前後やそれ以上の方の転職市場に良い影響が生まれてくると思います」

かつてよく耳にした「35歳転職限界説」は、もう過去のもののようです。

「40代くらいになると、未経験の仕事で活躍するのは難しいと思っている人が多いです。企業側も、同業種から採用したいと思っている場合が少なくありません。でも、人材サービス産業協議会や厚生労働省のホームページに掲載されている、ミドルシニアの方が異業種に転職した場合と同業種に転職した場合の活躍度の調査結果を見ると、異業種からの転職でも同業種からの転職でも、大して活躍に差がないんですよ」

私たちとしては、「40代から新しいことにチャレンジしてみよう」。企業側としては、「40代で異職種の人を採用してみよう」と前向きに考えられるきっかけとなりそうな調査結果です。

確実に転職限界年齢は上がっています。

今、自分の将来が気になっているなら、ちょっと立ち止まって「なぜ働くのか」を考えてみましょう。その過程で、本当にやりたいことが明確になってきたら、本格的に「自分の棚卸し」を始めてみてはいかがでしょうか。

(取材・執筆:旦木 瑞穂)

この記事の取材協力先

パーソルキャリア株式会社
https://www.persol-career.co.jp/

タグ: 仕事 定年退職 定年後 定年前 定年後の生きがい

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