【建築家監修】木造工法についてくわしく知りたい/60歳からのリフォーム建て替えQ&A ④

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木造建築について

定年退職前後になり、長年住み慣れた我が家をふと見渡してみると、あちこち気になるトコロがいっぱい。

お隣さんや友だちも「リフォーム」や「建て替え」したと言っていたけれど、損したとか失敗したなどの話も少なくない。いろいろ聞きたいけれど、どこへ相談したらいいのかわからない…という定年世代の方々におくる「リフォーム・建て替え講座」です。

シリーズ第4弾は、戸建ての建設やリノベーション・建て替えで一番多く採用されている建築工法「木造工法」についてお届け。引き続き、建築家の金子智子さんにわかりやすく「Q&A方式」でお答えいただきました。



木造建築について

木造工法についてくわしく知りたい

Q. 戸建てで「木造工法」を採用するメリットは?

A. 木造工法のメリットは「コストパフォーマンスが良い」「自由度が高いこと」があげられます。

戸建ての建設・建て替えは、どんな方にとっても大きな買い物になりますよね。一生に何度も買うわけではないため、最大限に希望を叶えたいところですが、色々と手を加えていくとやはりお金がかかります。

ですからコスト面でより希望に近い工法を選択すると、現実的な費用感の木造工法が選ばれることが多くなります。

また、木造在来工法の場合は「自由度が高い」ということもメリットです。増築や減築もしやすく、希望に沿ったリノベーションが可能になります。

とくに私たちのような設計事務所で設計・施工する場合は、土地や場所の特徴、そこに住む人のライフスタイルなどに合わせた設計をご提案するため、自由度を優先できる木造在来工法を採用することが多いです。

ちなみに木造2×4枠組工法は、規格寸法がある程度決まっているため在来工法よりも自由度は低くなります。



木造建築について

Q. 建て替えやリノベーション時に、木造工法へ変更することは可能ですか?

A. 建て替えの場合は可能。リノベーション時は基本的に変更は難しく、同じ工法になります。

建て替えを希望の場合は、家を解体して新しく建てるため、どの工法にも変更はできますし変えることは自由です。

リノベーションの場合は、例外もありますが基本的には同じ工法になります。

RC造(鉄筋コンクリート造)の場合、内装だけをリノベーションするのであれば、木製の下地で壁を組むことは可能ですし、鉄骨造で増築する場合もあります。

また、重い工法の上に軽い工法、例えばRC造工法の上に木造工法を増築するといったことは可能ですが、増築の場合は確認申請が必要です。

そのほか、ハイブリット構造が不可となる組み合わせもあり、諸計算も煩雑になってしまうため、リノベーションの場合は同じ工法を選択するのが一般的でしょう。

Q. なぜ、木造在来工法はリノベーションや増築しやすいの?

A. 柱と梁で組まれているため動かしやすく、部分的に手を加えられるからです。

木造在来工法は、日本の伝統的な建築工法です。木造軸組構法(もくぞうじくぐみこうほう)とも呼ばれ、柱と梁(はり)で骨組みを組み、斜めに筋交いを入れて補強する工法です。

柱や梁などは動かすことができるため、希望に沿ったリノベーションや増築、間取り変更が可能になります。

部屋の区切りをなくしたい、階段の位置を変えたい、廊下を広くしたい、キッチンとダイニングを繋げてLDKにしたい…など、ライフスタイルの変化によって変わる希望をかなえることができるのが、木造在来工法の最大のメリットです。

木造建築について

Q. 最近の流行り、人気や傾向を知りたい

A. 大きく建てた家を減築(げんちく)する人が増加。将来やリサイクルを考えた建築も。

少子高齢化の時代を反映し、増築した部分を減築するという人が多くなりました。また、空き家をリノベーションして自分らしい家へと変化させる方も増加しています。

最近はライフサイクルコスト(LCC)を考える方も格段に増えました。

ライフサイクルコストとは、建設費、修繕費、管理費、解体、産廃費など構造物を取得して使用する過程での必要経費の総額のことです。

このLCCで一番大きなお金が解体です。例えばコンクリートを解体すると、ものすごいお金が必要になり、場所や大きさによっては何千万もかかることがあります。

解体後もコンクリートは再利用できないため、産業廃棄物として捨てられるのですが、その処分場が少ないことも問題になっています。

木造建築は解体後も木材をリサイクルすることができるという点など、環境面でも見直されてきていて、これまでRC造が大半を占めていた大規模建造物も木造建築が増加しています。

木造建築のデメリットでよくあげられる耐火性や遮音性ですが、近年は鉛のシートを入れるなど機能も格段にアップしています。地球やリサイクルのことを考えると、今後は木造建築が主流になっていくと思います。

( 取材・文章/ライター 田鍋利恵 )


金子智子プロフィール
監修:金子 智子(かねこ さとこ)さん

一級建築士・東京都木造住宅耐震技術者・既存住宅状況調査技術者
  
金子智子建築設計室
一級建築士事務所
(東京都知事登録第49636号)
東京都木造住宅耐震診断事務所
(登録番号443号)

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