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「ずっと家にいて終活が進まない」 「そろそろ納骨したいのに見学ができない」 そんなお悩みを少しでも解決すべく、青山霊廟(東京都港区北青山2-12-9・外苑前徒歩2...
定年後の生活や子供たちの今後についてなど、定年を迎えるまでの期間には、考えることや決めなければならないことがたくさんあります。
中でも、大きな問題として立ちはだかるのは「年齢を重ねた親のこと」「親の老後について」ではないでしょうか。
そこで今回は、高齢者介護や認知症ケアの研究員として、国内外の様々な現場の声を見聞きしてきた伊東美緒さんに「定年世代の親との向き合い方」という視点でお話を伺いました。
私もそうですが、みんな自分の親に何か起こるまでは「私の家は大丈夫」と思っていますよね。ナゼなのでしょう。
今は情報過多の時代なので、高齢化問題とか認知症がどんな病気なのかなど、テレビや新聞、ネット記事を見て良く知っていると思います。
本気になれば、様々な情報を自分なりに見つけることもできますし、実は考える機会や時間はそれなりに確保できるケースも多いんです。
みんな考えなければならないのに考えていない、「あえて避けている」ようにも見えます。それに気づいても、日々に追われて後回しにしてしまいますよね。
そしてもうひとつ「親が老いることを受け入れたくない」のかもしれない。
自分の身内に起こるまで他人事だから、いざという時に大混乱になってしまうのは、至極当然なのかもしれません。
親との向き合い方がわからないのではなく、向き合っていない。つまり、自分で向き合うことを避けている人が多いということになります。
まずは親の現状を把握すること、対話することからはじめてみること。
親を思う気持ちが多少でもあるなら、早めに自分のこととして考えることが最初の一歩になりますよね。
ありきたりなのですが、親が元気なうちに、時々連絡をとって日頃の様子を把握し、向き合おうとする気持ちを作ることです。
体調や状況の変化に気づくには、やはり日頃の様子を把握しておくことと、連絡しやすい関係づくりが大切なのです。
とくに認知症の場合、初期段階ではゆるやかに進行していくため「アレ?なんだかいつもと違うぞ?」と気づけるかどうかも重要になります。
例えば、何回も同じ話をしてないかとか、昨日の出来事を忘れていないかなど、小さな気づきの部分ですね。
また、実家に行ってみて、いつも綺麗だった家が散らかり放題になっているとか、得意だった料理を全然していない様子だとか。
ちょっとした日々のズレに注目してください。
「大変だ!」「どうしよう」と慌てふためくのが一番避けたいことです。
親の様子がおかしいと気づくと、大抵の人はそれを受け入れられませんし、大騒ぎしてしまいます。
「どうしたの!?」「大丈夫!?」と本人を責め立て、兄弟・親戚に連絡して「お母さんがおかしい!」「私は遠いからあんた様子見に行って」等と言い合いになったり。
結果、本人を不安にさせてしまうだけでなく、揉め事の原因にもなってしまいます。
そのあげく、子どもたちが「小姑化」するんです。
今まで全く気にしてなかった「燃えるゴミに缶が混ざってるよ」とか「電気を消し忘れてる」など、細かくチェックし始める。
認知症初期の段階では、普通のこともできますし、ほとんど変わりなく過ごせる人も多いんです。
本人も、自分はしっかりしていると思っているため、いきなり家族から出来ない人扱いされたり、指摘されたりしたら腹も立ちますよね。
普通に生活できる人に対してアレコレ言ってしまうと、バカされているような気持ちになって「もう来なくていい!」「帰ってくるな!」となってしまいます。
みんなそうなるし、たぶん私もなると思います。心配しているからこそだと思いますが、気をつけたいところです。
親を思う気持ちがアダにならないためにも、現状を受け入れ、気持ちをグッと抑えて「不安を煽らない行動」をとりたいですよね。
受け入れられないことが本人にとって一番辛いことなのです。
少しでも心配の気持ちを抑えるために「長寿の証(ちょうじゅのあかし)」と考えるのはどうでしょう。
まず、認知症は恐ろしい病気という概念を取り払い「老いの一部」という認識を持ってほしいんです。
他の大きな病気にかからず、ここまで長生きできたことに感謝するという思考に変えてみるのです。
親とある程度の関わりを長期的に持つことができれば、老いや認知症になることを「長寿の証(あかし)」として認めやすくなると思います。
気楽に考えてもらえればといいと思います。元気で良好な関係のうちに、ちょっとずつ連絡を増やすとか、一年に1回だった帰省を2回にするとか。
たくさん話してたくさん会っていれば、ちょっとした変化にも気づき、対応もスムーズになりますよ。
ただし、前述のように「小姑化」しないよう気をつけてください。細々した指摘を繰り返してしまうと「もう来るな!」と言われて関係性を築くことができません。
「そんな当然のことは知っている」とみんな言います。
でも、ありきたりで普通のことが出来ていないから、みんな大慌てで介護の世界に突入し、必要以上に疲弊してしまうのではないでしょうか。
30代40代の子育て世代や働き盛り世代は、何かと忙しいしいですし、それどころではないという気持ちはわかります。
ですから、定年を見据えた50代後半から60代の人が、定年退職をきっかけとして、親との接点を作り直す機会にしたらどうでしょう。
自分と向き合う時間が増えてくる定年世代には、ちょうど良いタイミングだと思いますよ。
病院への受診が必要な場合、病院へ行くよう促していただいたり、場合によっては救急車を呼んでいただくということになります。
病気の治療というより、介護サービスが必要らしいという場合には、地域包括支援センターに連絡してみましょう。
親の住む地域の地域包括支援センターに連絡することをお勧めしますが、介護保険制度で使えるサービスや条件等を訪ねたい時などは、お住いの地域で相談しても良いと思います。
地域包括支援センターは、介護が必要になった時に初めに相談するところと考えてください。
介護保険の申請をして実際にサービスを使えるようになるまでは時間がかかります。ですから誰かの手助けが必要だと思ったら、早めに相談してみてください。
ただ、地域包括支援センターには毎日多くの相談が寄せられるので、できる限り相談内容をまとめ、効率的に相談していただけるとありがたいと思います。
地域包括支援センターに相談することで、その自治体が実施している介護予防プログラムなどを紹介してくれることもあります。
治療についての相談は、医療機関ではないので難しいと思います。
病院・治療のことになりますが「なにがなんでもとりあえず入院!」「できる治療は全部やってください!」という方もいますが、本人は本当にそれを望んでいるのか、本人を含めて話し合っていただきたいですね。
例えば、なんとか自分で生活していた85歳の親が、肺炎などの病気で入院した際のことを考えてみてください。
治療のために必要な点滴を、混乱して抜こうとしてしまうことがあります。これは認知症でなくても、入院することで一時的に混乱してしまう「せん妄」という状態なのですが、誰にでも生じる可能性があるものです。
点滴を抜かないようにするために、ベットの柵に紐をつけ、それを両手首につなげるという身体抑制の対応をとることがあります。
この身体抑制を実施する期間が長いほど、体や心の機能は低下してしまいます。
肺炎は治ったけれど、全身の状態が悪くなってしまった…ということも少なくないのです。
そうならないために、ただ単純に「治ってほしい」「死なないでほしい」という思いを医療者に伝えるだけでなく、本人の希望を確認する努力をしてほしいと思います。
また、認知症がすすみ、本人の意思を確認できない場合も多々あります。
認知症や重度介護になって自分で選択できない状態になってしまう前に、普段の何気ない会話で希望を聞いておきたいですね。
そうですね。日本人はとにかく「生(せい)」しか語らない、病気や老いを避けている傾向があると思いますから、きっかけを作るのが難しいですよね。
医療技術の発達で「老いが医療化」してしまい、老いることが病気のような扱いになっていることも要因の一つでしょう。
どんな生き物も「生老病死(しょうろうびょうし)」は避けられないですし、若いうちから老いについて前向きに考えることができる社会になったらいいなと、つくづく思います。
知らないままにしておくことで、「認知症になったら大変!」という周囲からの情報に煽られてしまい、あらゆることを恐ろしく感じるのではないでしょうか。
「恐ろしいモノ」と思うと、距離をあけたくなりますよね。
「自然な老い」の過程で病気になることもありうる…そう考えた上で、親にとって最も嬉しいこと、反対に苦痛になっていることを考えることができれば、ケアや治療の選択がしやすくなるかもしれません。
「こうしなければならない」という決まり事はないですし、経験者や専門家に助言をもらいながら、それぞれに合った介護をすればいいと思います。
そのついでに、自分の辛い気持ちを吐露して、わかってもらいましょう。経験者の方ならば必ずわかってもらえますし、心をちょっと軽くしてくれることがあります。
もし、相談したらかえってお説教されて気分が落ち込んでしまった…という場合には、ほかの相談者を探しましょう。
親との向き合い方も難しく考えず、「今年は会う回数を1回増やす」など、実行に移せることからスタートしてみてください。
( 取材・文章/ライター 田鍋利恵 )
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