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生涯現役、人生100年時代と言われる昨今。新聞やテレビでニュースを見ていても、街を歩いていても、最近は昔より元気な高齢者が増えているように感じます。
そこで今回は、定年を経てなお、働き続ける高齢者は増えているのか?シルバー人材センターを利用する高齢者は増加しているのか?
など、高齢者の“働く実情”やシルバー人材センターについて、東京都シルバー人材センター連合 シルバー人材センター課長 板谷明さんにお話を伺ってきました。
シルバー人材センターは、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」に基づき、区市町村ごとに設置されている公益法人です。
「自らの能力を活かしながら、自分なりの働き方で社会参加をしたい」という60歳以上の方に対し、居住地域で働くことを通じて、活力ある高齢社会、地域社会づくりに貢献。高齢者が健康で生きがいのある生活が送れることを目的に、企業や家庭、公共団体などから就業の機会を提供しています。
2018年3月末の時点で、東京都には58のシルバー人材センターがあり、約82,000人の会員が活躍中です。
「当センターは、昭和50年頃に構想された組織ですが、当時は55歳定年制で、年金制度もしっかりしておらず、退職後の人達に対する対策が、今より十分ではありませんでした。リタイヤ後の高齢者たちをどうしたらいいかが社会的な課題になっていて、それに対する一つの回答が、当センターでした」
逆に言えば、「仕事を通じて地域に貢献し、仲間づくりや生きがいづくりをしてもらおう」という狙いがありました。
「女性は子育てなどを通じて地域にネットワークを持っている方が多いので、定年後の男性を念頭に置いて考えられた仕組みであるため、会員は男性が3分の2を占めています。長年勤めていた男性たちにとっては、仕事なら抵抗なく自然に地域に対する貢献や生きがいづくり、仲間づくりができるのではないかと考えられたようです」
シルバー人材センターの会員になり、業務を受託するには、2種類の形態があります。
ひとつは請負契約。もうひとつは派遣契約です。
派遣契約は、仕事の依頼者と会員の間に指揮命令関係ができる雇用形態です。
一方、請負契約は、仕事の依頼者と会員との間に同センターが入り、仕事や報酬の割り振り方などを同センターが決めます。
そのため、依頼者と会員の間に指揮命令関係がなく、就業先で依頼者から会員が直接仕事の指示や命令を受けることはありません。
「会社で行ってきた働き方とは違い、当センターが依頼者から仕事を受けると、仕事も報酬も、分配方法を会員たちで考えます。例えば公園の草むしりを1ヶ月100万円でやって欲しいという依頼が来た場合、そこに何人投入しようが、期限内に終われば自由です。会員が60歳以上で、会社組織の雇用関係とは違った働き方をしていこうという考え方が基本にあります」
週20時間未満、月10日程度におさめるという、臨時的かつ短期的または軽易な働き方が基本。派遣契約の働き方はまだ始まって間もないこともあり、全体の1%程度に留まっています。
「現役時代とは違って、あくまでも生きがいや仲間づくり、地域貢献をしていくことが目的なので、会員一人当たりの収入は、ひと月平均4万5千円前後と、収入としては少なめとなっています」
シルバー人材センターを利用する高齢者は増加しているのでしょうか。
「減っています。2011年度には、87,000人近い会員がいました。しかし現在は、82,000人に届かない程度です。
5〜6年の間に5,000〜6,000人くらい減っています。
理由は、経済的要因と、生涯現役の動きです。
2012年〜2013年頃に、65歳まで雇用延長できる企業が増え、本格収入を目指して働き続ける人が増えました。
その一方で、雇用延長した後のその次の生き方をどうするかを考えるため、昨年辺りからハローワークに『生涯現役支援窓口』が設置されました。年金受給に不安のある方や元気な方など、本格労働を目指す高齢者の方が増え、そちらに流れています」
バリバリ働きたい人はハローワークの「生涯現役支援窓口」。そうでない方はシルバー人材センターという流れになっているということでしょうか。
「生きがいや仲間づくり、地域貢献をしたい人は、変わらずこちらには来ているので、棲み分けさえしっかりしていけば良いということなのでしょう。
ただ、かつての主力だった60〜65歳が先に減り始め、最近は60代後半の人も減ってきています。
現在の平均年齢は東京で74歳。全国では72歳。シルバー人材センターが高齢化しています。60代が主力だった働き方、ノウハウで運営し続けていますが、変えていかなくてはという意識がようやく出てきました」
仕事を依頼する側としては、フルタイムの人を雇うより、シルバー人材センターに依頼する方が効率的な場合があります。
マンションの清掃や給食を届ける仕事など、何人かで行えば2〜3時間でできる仕事は多様にあるからです。
また、調理補助の仕事のように、調理師などの免許がなくても、配膳や片付けなど「仕事の一部分だけ請け負って欲しい」という依頼も少なくありません。
同様に、簿記などの資格がなくても、事務や経理補助の仕事はできます。派遣契約の仕事では、施設管理や事務系の仕事も増えているとのこと。求める人が増えれば、職の幅も広がっていきます。
「最近力を入れているのは、保育園の保育補助の仕事です。補助なら資格がなくてもできます。特に女性は、子どもを育てた経験がある方や子どもが好きな方が少なくありません。
とはいえ、あまり長時間だと体力的にも精神的にも負担が大きいので、週に数日、1日数時間ずつ数人で交代して、一人あたりの負担を減らしています」
同センターでは、「みんなで同じ仕事を分け合おう」というワークシェアの考え方が基本にあります。
基本的にはみなさん高齢者なので、調子が悪い日もありますが、数人で同じ仕事をしていれば、交替することができます。
また、十分な休息をとれば、仕事に対する新鮮さを常に失わないというメリットもあります。さらには、仕事の一部分を担うことで、生きがいづくりや社会に貢献しているという自信につながります。
(取材・執筆:旦木 瑞穂)
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