介護と旅の専門家、トラベルヘルパーの仕事とは?

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高齢になったら、身体が不自由になったら、もうお出かけや旅行へは行けなくなるのでしょうか。そう思うと、とても寂しい気持ちになりますよね。

でもそんなことはありません。身体が不自由な方や高齢で外出が不安な方でも、トラベルヘルパーがいれば、行きたいところへ連れて行ってもらえます。

トラベルヘルパーは、介護技術と旅の業務知識をそなえた「外出支援」の専門家。身体が不自由な人や健康に不安がある人の希望に応じて、身近なお出かけから介護旅行の相談まで、外出に関わるすべての支援サービスを行っています。

今回は、そんなトラベルヘルパーについて、どんな人がトラベルヘルパーになれるのか?どんなところへ外出するケースがあるのか?など、詳しいお話を、特定非営利活動法人日本トラベルヘルパー協会の理事長兼、トラベルヘルパー(外出支援専門員)による介護旅行を企画・運営する「あ・える倶楽部」の代表を務める篠塚恭一さんと、常務を務める篠塚千弘さんに聞いてきました。

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トラベルヘルパーの仕事とは

トラベルヘルパーとして仕事をしたい人は、トラベルヘルパー準2級以上の資格を取り、「あ・える倶楽部」などの介護旅行サービスを行っている会社に登録をします。

「あ・える倶楽部」では、まずはオリエンテーションを受け、先輩のトラベルヘルパーに付いて介護旅行に行き、指導を受けるなど、スキルに合った仕事を経験しながら成長していきます。

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「お客様(あるいは利用する方)は、楽しい時間を過ごしたい。それを叶えるためには、トラベルヘルパーは多少の体力は必要です。

そして、屋根のないところに連れ出すわけですから、突発的なことが起こったときに臨機応変に対応できる能力が必要です。

想定外でしたでは済みません。

私たちには連れ出す責任があるので、起こってしまった後に対処法を考えていては遅いのです。特殊な事情を抱えている方たちの特別なニーズを叶えるわけですから、当然特別な知識が必要になります」 トラベルヘルパー7

四国八十八ヶ所巡りに行きたいという依頼があったときは、「行ってみなければわからない」ではなく、事前に徹底的に調べて希望を叶えたそうです。

通常のルートでは無理でも、別に車で近くまで行けるルートを見つけたり、最悪、その場に手伝ってくれる人が誰もいないというケースも想定し、段差解消機を持って行くなど、万が一に備えます。
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トラベルヘルパーは、養成講座や研修で、想定外に対応できる能力を身につけ、「楽しい旅行」をサポートする方法を学び、訓練しているのです。

トラベルヘルパーは子育てや仕事がひと段落した50代の女性が中心

トラベルヘルパーの資格は、3級、準2級、2級、1級(コーディネイト技法)の4種類があります。

3級は、介護旅行について学びたい人や、ご家族や身近な人を外出に連れて行ってあげたい方など、トラベルヘルパーについて学びたい方ならどんな方でも受講できます。

準2級は、トラベルヘルパー養成講座の3級を修了もしくは同時受講していることと、介護・看護系の資格のある方もしくは取得見込みの方で、トラベルヘルパーとしてお出かけや日帰り旅行の仕事をしたい方、実地研修に参加して車いすの外出技術を学びたい方など、ご家族や身近な人を外出に連れて行くだけでなく、仕事として、身体が不自由な方や、健康に不安がある方のお出かけや日帰り旅行に付き添いたい方が受講できます。
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そして2級は、トラベルヘルパー養成講座準2級修了者もしくは同時受講していることと、トラベルヘルパーとして宿泊を伴う介護旅行の仕事をしたい方、実地研修に参加して介護旅行のスキルを学びたい方などが受講できます。

「3級は特に資格は必要ありませんが、準2級以降は、介護・看護系の資格があれば取得できます。現場で活躍されている方は、50代の女性の方が多いですが、もちろん男性もいます。子育てや仕事が一段落した方や、ご自分の家族を介護した、看取ったなど、ご自分の経験から、誰かの力になりたいと考えて受講される方も多いです」

篠塚さんは、1991年から旅行会社への人材育成や人材派遣業務を行っており、1995年にはすでに、トラベルヘルパー(外出支援専門員)の育成事業を開始していました。

「創業30年近くになりますが、現在は年間800件ほど介護旅行の依頼をいただいています。30年前と比較すると、近年は終末期を迎えた方や要介護度が高いお客様が増えています」

その理由には、インターネットの普及により、同社の存在や活動を知られるようになり、終末期や要介護度が高い方でも「旅行を諦めなくて良いんだ」という情報が広まったことが考えられます。

「その一方で、最近は自立度の高い高齢者の家族からの依頼も多く寄せられるようになりました。忙しくて一緒に行ってあげられないからと、『話し相手になってほしい』『荷物を持ってあげてほしい』という息子さんや娘さんからの依頼が増えています。もちろん、『1人だと不安だから』というご本人からの依頼もあります」

仕事や子育てに追われる働き盛り世代と、おひとりさまが増えている高齢者世代の現状が、こんなところでも浮き彫りになっています。

「行けるところへ行く」のではなく「行きたいところへ行く」トラベルヘルパー

同社の介護旅行は、予約手配をするコーディネート役のトラベルヘルパーが事前に行き先をしっかり調べるか、もしくは、家族の方からヒアリングをしっかりして、安全を確認した上で進めています。

「車椅子の方から、沖縄に行きたいという依頼があったときは、現地にいる介護タクシーの運転手兼、トラベルヘルパーの資格保持者と、東京から一緒に行ったトラベルヘルパーの2名体制で、波打ち際までの階段を降り、水遊びを叶えました。階段はどう介助するか、温泉ではどうお手伝いするかなど、養成講座でしっかり学んでいます」

トラベルヘルパーは力仕事が多いイメージがありますが、介護機器を利用したり、事前に現地の様子を調べたり、複数名体制で付き添うなどして、「行けるところへ行く」のではなく、「行きたいところへ行く」旅行を実現しています。
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「先日、八ヶ岳と上高地に行かれた車椅子の方は、自然の中を散策したいという希望を持たれていました。そこで、トラベルヘルパーが普通の車椅子では行けないところでも行ける、特別な車椅子を手配して、その願いを叶えることができました」

その奥さんは旅行を終えて、「トラベルヘルパーって車椅子を押してくれるだけの方だと思っていましたが、食事や排泄、お風呂など、外で必要な介助を全部してくれただけでなく、臨機応変に車椅子手配までしてくれて、とても驚いています。それでこの料金で本当にいいんですか?」と、とても感激していたといいます。

同社のトラベルヘルパー利用料金は、国内で、1日あたり20,000円〜。

「何度もリピート利用してくださる方も多く、利用者様の息子さんから『利用するようになってから笑顔が増えて、みるみる元気になっている』という喜びの声もいただいています。『お金を貯めて、また利用しますね』と言ってくださる方は多いですね」

依頼者は必ずしも裕福な方ではなく、行き先も、遠方の旅行に限られていません。嫁いだ娘の家に行きたいとか、もう一度故郷に行っておきたいとか、先祖代々のお墓参りをしたいなど、それぞれの切実な願いがあるといいます。

「ただ、お墓参りと言っても、きれいに整備された霊園ではなく、山の中腹にあるようなお墓の場合も多いんですよ」

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人生100年時代と言われる昨今、支えが必要な人を、身内だけでは支えられなくなってきました。

家族も、会社も、社会も、考え方を変えなければいけない時代になり、少しずつですが変わってきています。社会との接点を持ち続けるために、支える側に回る健康な高齢者は増えています。

年齢を重ねることに不安や恐れを抱いている人は少なくありません。しかし、年齢や健康状態によって諦めなければならないことが減れば減るほど、安心して歳を取ることができるような気がします。

トラベルヘルパーになりたい方、トラベルヘルパーを利用したいという方は、特定非営利活動法人日本トラベルヘルパー協会もしくは、「あ・える倶楽部」のサイトを覗いてみてください。

(取材・執筆:旦木 瑞穂)

この記事の取材協力先

あ・える倶楽部
https://www.aelclub.com/

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