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同行援護という仕事があるのをご存知ですか?
同行援護とは、目が見えない人や見えづらい人の外出に同行し、視覚情報を提供するのが主な役割です。
例えば喫茶店に行こうにも、視覚障害のある方にとっては行くまでが大変です。電車やバスに乗るにも、切符を買ったりホームに出たり、乗り降りするにも危険が伴います。
喫茶店に到着した後は、メニューが見えません。水の入ったグラスがどこにあるのかも分かりません。
食事や買物、映画などの余暇活動に同行して視覚障害者の目の代わりを務めるのが、同行援護の仕事です。
まだあまり知られていないお仕事ですが、ガイドのお仕事をされている方は、介護のお仕事と合わせて働く50代〜の方が多い印象。資格は比較的取得しやすいようです。
そこで今回は、同行援護専門のガイドヘルパーの派遣事業を行っている「otomo」の代表を務める鈴木貴達さんに、同行援護について詳しくお話を聞いてきました。
同行援護のガイドヘルパーになるには、「同行援護従業者養成研修」を受ける必要があります。
研修を受けて資格を得ることでお仕事ができるようになります。
資格取得には一般課程と応用過程があります。それぞれ数日の研修で、試験はありません。
一般課程は3日間の研修で取得することができます。同行援護従業者養成研修は、研修事業者として指定を受けているスクールで受けられます。
資格自体は特に難しくなく、未成年でも高齢者でも、どなたでも取りやすい資格です。取得費用は、一般課程なら、3万円〜4万円くらいで取得できます。
「ただ、まだあまり知られている資格ではないため、スクール自体、あまり頻繁に研修を行っていません。しかし時々、地域の社会福祉協議会などが研修を主催することがあり、その場合は、少しお得に資格が取得できることもあります」
興味がある方は、都道府県や市区町村の広報やサイトなどをチェックすると良いかもしれません。
「一般課程を終えていれば、同行援護の仕事はできます。応用課程を取得したい場合は、さらに2日間の研修を受けます。応用課程の研修 は、電車やバスなど公共交通機関の利用に関する内容の研修がメインです。
同行援護の仕事は交通機関を利用する場合が多いので、応用課程を終了しておくと現場への自信がつくと思います」
現在otomoに登録しているガイドヘルパーさんは、約40名。平均年齢40歳くらいで、10代〜70代まで幅広い年代の方がいます。
「多くの事業所の ガイドヘルパーは、60代~70代の方が多い ようです。otomoのガイドさんの平均年齢が若いのは、珍しいと言われます。基本的には、目が見えて、歩けて、ちゃんと情報提供できればいい 仕事なので、どなたでもやりやすい仕事だと思います。
時給は、otomoは1,200円くらいですが、月100時間とか150時間とか働ける仕事ではありません。高齢者介護の場合は、決まった曜日や時間に家事のサポ ートや身体のケアを行うケースが多いですが、 同行援護の場合は、余暇活動を支援する仕事なので、曜日や時間が決まっていないことがほとんどです」
同行援護は、「天気がいいみたいだから明日お出かけしたい」「食材が切れたから買い物に行きたい」など、突発的で単発な仕事が多く、安定しません。そのため、常勤のガイドヘルパーは15%程度。
その理由には、同行援護という仕事が、一般的にも、視覚障害のある者にもまだあまり知られていないということがあります。
「ガイドヘルパーは、 女性は『主婦の方が主婦業の合間に空いた時間を使って』という方が多いです。男性は仕事を引退して、『自分の健康のためにも何かやろうかな』という方が多い です」
自分の空いた時間で働けるということで、定年前後のミドル・シニア層にとって、相性のいい仕事かもしれません。
「男性は全体の1割程度しかいないので、シニア層の男性が興味持ってくれると嬉しいですね。 男性の利用者さんがプールや温泉に行きたい場合、男性でないと同行できないので、諦めてしまう利用者さんが少なくない んです」
利用者さんの年代は、20~70代くらいまでと幅広いですが、加齢と共に視覚障害のリスクが高まるため、高齢の方の割合が多いようです。
「若い方は仕事があるので、あまり余暇活動に時間が割けないというのもあります。高齢になってお仕事を引退されると、余暇活動を謳歌する方が少なくないですね」
同行援護を依頼する目的は、買い物やスポーツ、カラオケや映画、コンサートなどさまざま。「渋谷で服を買いたい」「表参道のパンケーキが 食べたい」「好きな演歌歌手の追っかけに同行して欲しい」などの依頼があるそうです。
「同行中の交通費や私設の入場料は、利用者さん負担になります。障害者手帳があれば半額になったり、同行者は無料になることもあります。
映画館は障害者手帳で割引がきく場合がほとんどですが、コンサートやライブなどは割引できないことが多く、利用者さんが同行者の分までチケットを取ることになります」
ガイドヘルパーの指名は、対応している事業所としていない事業所があり、otomoさんの場合は対応しています。
「相性の問題もありますし、リピーターの方も多いので、予約するときに指名される方も少なくないです。利用する頻度は、週に2~3回の方もいますし、3~4ヶ月に1回という方もいます。
一人でも歩ける方だと、初めての場所に行くなど、本当に心配なときだけですが、そうでない方は、繰り返し利用される方が多いですね」
鈴木さんは、自身のお母さんが視覚障害者だったことがきっかけで、otomoで同行援護のガイドヘルパー派遣事業を立ち上げました。
同行援護は平日の夜間や土日にも依頼が多いですが、土日や夜間に対応できるヘルパーが不足しているため、鈴木さん自身もガイドヘルパーとして同行しています。
「そもそも視覚障害者自身に、同行援護というサービスがあることを知られていませんし、知っている方でも、事業所を探すことが難しいという現状があります。
例えば足立区では同行援護を行っている事業所が175ありますが、そのうち172は訪問介護などの事業所と兼用しています。
同行援護はメインではないため、新規受付を行っていないところが多いんです。
視覚障害のある方は、区役所で事業所リストがもらえますが、事業所名と電話番号しか書かれていないので、そこが同行援護の新規受付をしているかどうかが分かりません。何十軒も電話をかけて、全部断られるケースもあります」
同行援護は余暇活動が目的なので、見つからなければ諦めてしまう人も多いといいます。そこでotomoでは、視覚障害者と希望が叶う事業所をつなぐマッチングサービスを準備しています。
「同行援護に限らず、ベンチャーらしくいろんな未開拓な分野に挑戦したい」と話す鈴木さん。最近では、専門学校とタイアップして、視覚障 害者のためのヨガクラスや、お部屋探し支援を始めました。
「視覚障害を持つ方は、オーナーさんの理解が得られず、審査が下りないケースが少なくありません。そのため、同行援護と組み合わせて支援を始めました。
先日、NHKのラジオ番組でお話しする機会があったのですが、それ以降、いろいろな方面から相談を受けるようになり、『困っている人はたくさんいるな』と思いました。問題をひとつひとつ解決していきたいです」
同行援護のガイドヘルパーによって、「ライブに行けた!」「10年ぶりにお出かけできた!」「陶芸体験ができた!」と夢を叶える人が増えています。
“できなかったことができる喜び”は、日々の活力になり、「次はこれがしたい!」と、前向きな気持にさせます。「コミュニケーションがとれる人」「話すことが苦でない人」「自分の考えを押し付けない人」であれば、同行援護のガイドヘルパーはできま す。
興味のある方は、まずはotomoのサイトを覗いてみてください。資格取得やヘルパー登録など、わからないことがあれば、問い合わせてみましょう。
(取材・執筆:旦木 瑞穂)
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