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定年世代の挑戦「シニアタレントへの挑戦」
人生100年時代といわれる昨今、定年を間近に見据えた50代前後で新たな活動を始められる方が増えています。
その中のひとつが芸能活動。学生時代に演劇部や合唱団に入っていた方、人前で話すこと、歌うことに自信がある方などが、時間的にも金銭的にも余裕ができたことをきっかけに、若い頃に憧れた世界に飛び込んでみようと考える方が少なくないようです。
今回は、東京と大阪にある芸能プロダクション、ミュージックバンカー代表取締役 水谷智明さんに、シニアタレントの需要や仕事内容などについてお話を聞いてきました。
ミュージックバンカーは、音楽関係や声優・俳優などのマネージメントからプロデュースまで、芸能に関するさまざまな活動を行っています。
もともとは10代〜20代の若者を対象にしていましたが、2016年頃シニア部門を立ち上げました。
「シニア部門を立ち上げたきっかけは2つあります。1つは役者を目指す若い子たちに対して、モチベーションをつけるために映像案件を振ることが多いのですが、メイン所でキャスティングされることは、売れている子でないと難しい。だから売れるまでの間、人によってはエキストラの仕事をしてもらうケースがあります。エキストラの仕事は、ギャラは安いですが、制作会社側からのニーズは少なくありません。あるとき、エキストラの仕事の中に、40代や50代、60代、70代向けの仕事も相当数あることに気が付きました。しかし当社には、対応できるシニアタレントがいない。せっかくの仕事をスルーするのはもったいないなと思ったのがきっかけでした」
もう1つのきっかけは、お母さんとの会話でした。
「60代半ばの母は、平日は仕事をしながら、土日は公民館でパッチワークを教えたり、コーラス教室に通ったりと、ものすごくアクティブに過ごしています。その理由を尋ねたら、『同年代の友だちが他界したり、子どもが独立したりして、お父さんと2人きりでは寂しい。だから外に出るようになった』と言うんです。そこで、『私ができることでシニアの方の手助けになることはないだろうか』と考えたとき、シニア向けのエキストラ案件があることを思い出したんです。これが、シニア部門を立ち上げたきっかけでした」
同社に在籍している40代以上のシニアタレントは、現在25名。まだ2年くらいですが、少しづつ増えてきているといいます。
シニア部門への入会の動機としては、学生時代に演劇部や合唱部などに所属し、過去に演劇や歌などの経験がある方が多い一方で、「若い頃にできなかったことをしたい」「憧れの世界に飛び込んでみようと思った」など、全くの未経験者も少なくないのだそうです。
「当社のシニア部門に在籍すると、主に4つの活動があります。1つ目はエキストラなどの映像案件。2つ目はお芝居のレッスン。3つ目はFMラジオ番組。4つ目はミニ公演です。1つ目のエキストラなどの映像案件は、「白髪で太めの社長さんっぽい60代男性」など、制作会社側から細かい条件が出されるので、それに沿った方を紹介しています。2つ目のお芝居のレッスンは、エキストラなどの映像案件に対応する演技力をつけることと、会員同士が集まる機会づくりとして、月に1度のペースで行っています。みなさん仲が良くて、レッスンの後は必ずお食事会を開いているんですよ」
3つ目のFMラジオの活動とは、調布FMで放送している「ミドルエイジカフェ」という番組制作です。
「少し前まで、ラジオは『終わったメディア』と言われていましたが、最近はスマホのおかげで復活しました。『ミドルエイジカフェ』は、週1で放送している番組ですが、1週目、2週目…と担当をグループ分けして収録しています。当社は現在、全部で26本ほど番組を持ち、制作を手がけていますが、若い子たちノリの番組とは違って、人生経験豊富なシニアがドーンと構えてトークをくり広げていく、かなり面白い番組です」
もともと芝居に興味がある方たちなので、メンバーでラジオドラマを作り、番組内で流しています。ラジオドラマの練習はレッスンの中で行い、ラジオに出演しているとファンができます。ファンが増えれば、エキストラなどの映像案件の仕事がしやすくなります。
「4つ目のミニ公演は、『せっかく同じ趣味で集まった者同士で何かやろう』ということで始まりました。『大人の文化祭』と銘打って、毎年4月と10月に行っています。レッスンで演目を稽古し、ラジオで告知宣伝を行い、公演にファンが来てくれる…といった感じで、4つの活動が上手く連携しています」
「『シニアタレントなりたい』ということで、当社の門をたたく方は増えています。割合的には、3対7くらいで女性が多いですが、最近男性が増えてきました。年齢的には50代が一番多いですが、80代近い方も在籍しています」
定年退職や引退を控え、セカンドライフを見据えて動き出す方が多いようです。
「お仕事を続けながら始められる方もいますし、専業主婦の方もいます。先日入会された方は会社の社長さんで、多方面で活躍されている方なのですが、肩書が邪魔して気のおけない友だちができないのだそうです。『肩書を気にしなくていい場所で、同じ趣味を持った友だちを作りたい』とおっしゃっていました」
社会的な地位が高い人ほど、仕事とは関係のない場所で、同じ趣味の仲間を求めているのかもしれません。
「当社のシニアタレント部門に関しては、『本気で芸能人を目指そう!』というプロ志向で打ち出してはいませんし、入会される方も、タレントとして『売れたい』と思っている方は少ないです。演技ができる環境を求めていたりとか、『同じ趣味の方と出会いたい』『仲間同士で楽しみたい』という目的で来ている方がほとんどですね」
同社のシニア部門に入会する場合、面談で事務所の考え方やシステムの説明を受け、フィーリングが合えば「ぜひお仲間になってください。一緒に頑張りましょう」となります。ひと月1万3千円の会費が必要ですが、エキストラなどの映像案件の仕事をこなすことでギャラを得ることも可能です。
「当社はプロを育成してきた経験があるため、シニアの方たちにそのノウハウや経験を提供できるとしたらこういう形になるのかなと思っています。大切なのは、楽しんでやれるかどうか。せっかく仲間になっても、辛くなって辞めてしまうような方が出てしまうと、経緯的にも立ち上げた意味がなくなってしまいます。プロとアマの中間の『セミプロ』という位置づけで、まさに気軽に楽しむ『サークル作り』というコンセプトで進めてきました。今後もこの環を広げていきたいと考えています」
人生にひと区切り付いて、新しい生き方を探している方。楽しいことや、エンターテイメントが好きな方。同じ価値観を持った仲間作りがしたい方。
年齢なんて関係ありません。シニアタレントの需要は高まっています。「芸能活動なんて」と構えずに、気軽に飛び込んでみてはいかがでしょうか。きっとワクワクする毎日が始まると思います。
(記事執筆:旦木 瑞穂)
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定年退職のこと
解体に関する記事の監修者
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地味に忙しい幸運体質の編集人
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