ニーズがある限り定年できない! ベテラン看護師が営む「託児託老・派遣サービス green」

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近年の日本は核家族化が進み、隣近所との縁も希薄になっています。以前ならば当然のようにあった親兄弟や親戚、ご近所さんなどの「手助けの手」をなかなか得られない世の中になってしまいました。

共働きの若い世代が子育てに悩み、仕事を持つ定年世代を中心に親の介護に悩んでいます。さらに「老老介護」で大変な思いをしている高齢の方もたくさんおられます。

そこで今回は、育児や介護の困りごとや、地域の問題に寄り添ったサービスを提供している「託児託老・派遣サービス green」の代表・溜池さおりさんに、子育て・介護の必要な人へ「必要な支援を届ける」取り組みについてお話を伺いました。

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地域のニーズから生まれた託児サービス

京都市中京区にある「託児託老 派遣サービス green」は、今年でオープン14年目を迎えた小規模多機能ケアの託児所です。

託児(一時預かり)を中心に、シッター派遣、病児・障害児保育、送迎支援、高齢者の訪問看護サービス(保険外)など、様々なサービスを良心的な価格で提供し、地域になくてはならない存在となっています。

京町家をリノベーションして作られた託児所内は、木のぬくもりいっぱい。たくさんのオモチャや絵本を手にした子供たちの元気な声が響きます。

お洒落なカフェのような外観と、ガラス越しに室内が見えるというのも親しみやすいポイントです。
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代表の溜池さんは、看護師・保健師・養護教諭免許・介護支援専門員など、幅広い資格を持つ看護と介護のスペシャリスト。国立医療センターや民間病院など、様々な医療の現場で看護師として活躍し、「green」設立後も訪問看護や在宅療養支援に取り組むなど、本当に頼れる存在です。

「人とのつながりが希薄になった地域社会で、資格と経験を生かして育児や介護支援の一助になりたいと考え、2004年に開設しました。実は当初、老人デイサービス施設を作ろうとしたのですが、認可がおりなかったんです」

高齢者サービスを事業をメインに考えていたが、認可が下りなかったことで、もともと併設予定だった託児の一時預かり事業を先行して進めることになったそう。

「オープン当時の14年前、この辺りは再開発ラッシュで、新しい商業施設や大学、大型マンションなどが増え、人口が急増しました。昔ながらの住宅地だったところに、単身者や子育て世代という新しい層が加わって、予想を超えて託児のニーズが増え、事業の柱になりました」

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怪我や病気、障害のある子も一時保育OK

一時預かり託児サービスでは、新生児から小学生まで幅広い年齢の子ども達を受け入れている。取材当日も、ハイハイする赤ちゃんや元気いっぱいに動き回る男の子など、年齢問わず和気あいあいと過ごしていました。

見守るスタッフの方も一緒になって遊んでいて、子供たちも気兼ねなくのびのびできている様子です。

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新生児の預かりも行なっていて、希望を伝えて大丈夫と判断してもらえれば、授乳や沐浴までしてもらえるそう。

また、働くママ達の悩みのタネである病児保育も受け入れており、2階の部屋に隔離して託児してもらえる(伝染病は派遣対応)。さらに障害のあるお子さんも、本人が集団でいることを苦にならない場合は受け入れてもらえます。

その他、「保育園へお迎えに行ってそのまま預かってもらいたい」「産前産後の支援がほしい」などのシッター派遣サービスも行なっているそうです。

「そのご家庭ごとに手伝って欲しい要望はさまざま。とくに病児や障害児を受け入れている場所は本当に少ないんです。毎日大変な思いをしているお母さんたちが、少しでも休憩できるような時間を提供したい」と溜池さん。

細やかな対応はそれぞれ要相談になりますが、看護師さんならではの柔軟な対応で利用者から高い支持を得ています。

保育や子育て経験豊富なスタッフのおかげ

スタッフは溜池さんを筆頭に、保育士や看護師資格を持つ方、子育て経験豊富な方など、さまざまな方々が在籍登録しています。
「細かなサービスを提供できるのは、スタッフみんなの協力あってこそ。ルーム責任者のくぼさんに至っては、オープン当初から助けてくれている頼りになる存在です。数名の非常勤のスタッフ以外は、副業として時間のあるときに出勤してくれたり、主婦業の時間の合間を見つけてお手伝いしてくれています」
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以前は子どもの一時預かり利用者として来ていたママさんが、子育てが一段落した今、スタッフとして手伝いに来てくれる場合も多いとか。

「今、どの業種でもスタッフの確保は難しいと思います。そんな中、チカラになってくれる人がいることはとても幸せなことですし、本当に有難いと思っています」

その時代にあわせて業務形態を変えていく

「あらためて14年間を振り返ると、街の変化とともにgreenの役割も少しずつ変わってきているように感じます。オープン当初よりも、今はもっと複雑で細かな要望が増えました」

医療的ケアの必要な子どもの依頼も多くなり、付き添いや送迎を代行してほしい等という「切実な要望」も増えたそう。

「入院中の長男に24時間付き添いしているけど、幼稚園に通う次男の運動会を見に行ってやりたい。そんなわずかな時間でも交代してくれる人がいないんです。そういった本当に必要な支援を大切にしていきたい」

介護や子育てなどの地域の困りごとの受け皿になりたい、地域で気軽に相談できる身近な専門家になりたいという溜池さんの思いは、昔も今も一貫して変わっていない。

「街の変化とともに、役割も求められる要望も変わります。そんな変化に対応できる場所であり続けたいですね」
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まずは65歳まで…ニーズがある限り、がんばりたい

「とはいえ、子ども達の若いパワーを前に、グングン元気を吸い取られている気がします(笑)。以前は若い力を元気に変えることができたんですけどね。託児や介護は本当に体力勝負ですし、年々体が辛くなっているのを感じます」

オープン当時は42歳だった溜池さん。今でも十分ハツラツとして若々しいのですが、たくさんの子ども達のお世話は大変で、毎日仕事を終えるとグッタリとしてしまうそう。料金的にも体力的にもどうしようもなく辛いと思う時がたまに訪れるそうです。

「そんな時は、greenがなくなったら困ると言ってくれるご利用者さんの言葉を励みにします。頻繁に利用できるようにと、わざわざ近くに引っ越して来てくださったご利用者さんもいますし、簡単にはやめられません。定年のない仕事なので、まずは65歳までを目標に頑張りたい」

まずは65歳を目標に。その後、70歳、75歳と、必要とされる限り頑張りたいと話す溜池さん。定年世代がお手本にしたくなるような、素敵な人生を歩んでいらっしゃいます。

親戚の家に遊びに行く、そんな場所でありたい

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greenで遊んでいる子ども達の姿を見ていると、「託児で預けられている」というよりも「知りあいの家に遊びに来ている」ような印象を受けました。

そのことを溜池さんに伝えると「それは嬉しいです。親戚の家に来るような、そんな存在になりたいと思いながらやってきましたから。赤ちゃんから小学校高学年まで幅広いですが、小さな子をお兄ちゃん達が面倒見てくれる場面もあり、そんな時は嬉しくなりますね」

greenのキャッチフレーズ「あなたの大切なご家族のお世話をいたします」のとおり、安心して家族を託せる場所として地域に根付いていると感じました。

溜池さんは託児以外にも、国や行政のサービスを利用したくてもなかなか利用できないという人を対象にした訪問看護や派遣看護にも力を入れています。
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「保険制度外にはなりますが、いつでも呼べる看護師さんとしても活動しています。訪問看護はライフワークとしてずっと続けたい。せっかく人の役に立つ経験や資格を持っているんですから、これからも社会に還元できたらいいなと思っています」

看護師、保健師、保育士、そして子育てや家事の経験を持つ主婦業。どの分野においても、経験や資格を活かすも無駄にするのも「考え方ひとつ」なんだなと痛感。

定年世代の中には、資格や経験という「自分の武器」に気づいていない人も多いはず。

greenには「自分の武器」を使って楽しく働いているスタッフがたくさん在籍していました。

溜池さんのイキイキと活躍する姿から、たくさんのことを学ばせてもらった有意義な時間でした。

(取材・文章:ライター たなべりえ)

この記事の取材協力先

託児託老・派遣サービス green
http://www.kitekitegreen.com/

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