60代が活躍している、傾聴ボランティアとは?

「傾聴ボランティア」というボランティア活動があることをご存知ですか?

傾聴とは、耳を傾けて熱心に聞くこと。もともとはカウンセリングの中のコミュニケーション技能の1つで、東日本大震災をきっかけに重要性が見直され、傾聴ボランティアを目指す人や養成する機関などが増えたようです。

現在傾聴ボランティアは、60代の方を中心に、高齢者施設などで活動しています。

傾聴ボランティアは、どんなことをするのでしょうか?傾聴ボランティアになるには、どうしたらいいのでしょうか?

今回は、「このまま高齢化が進めば必ず必要になるだろう」と考え、1999年に日本で初めて傾聴ボランティアを養成する活動をスタートした、NPO法人 日本傾聴ボランティア協会の理事長 鈴木絹英さんにお話を伺いました。

傾聴ボランティア1

傾聴ボランティアの養成を始めたきっかけは?

「当時から、話し相手のボランティアは大勢いました。傾聴はカウンセリングの技法のひとつですが、カウンセラーの先生や心理学の先生がやっていたことを、専門知識や技術を一般の方たちに教えることで、ボランティアとしてできないかなと思ったのがきっかけです」

それまで鈴木さんは、環境問題に取り組む仕事に打ち込んでいました。年齢を重ねるにつれ、自分の老後のことが気になり始めてきた頃、アメリカで「シニアピアカウンセラーが活躍している」という情報を耳にします。

シニアピアカウンセラーとは、高齢者が専門的なカウンセリングを学び、医者から精神的ケアや話し相手が必要だと判断された人たちの心のケアをするボランティアのカウンセラーです。

すでに日本の高齢化は始まっていました。「これから必要になりそうだ」と直感した鈴木さんは、すぐにアメリカに視察に行きます。しかし、「アメリカの制度そのままでは日本に合わない」。そう判断した鈴木さんは、複数人のカウンセリングの先生に相談しました。

「カウンセリングの先生方が教える傾聴は、あくまでも『心に何らかの病を持っている方のための治療』なんですね。でも、私がやりたいと思った傾聴は、『どんな人でも、話を聞いてほしい人のため』だったんです。

だから先生方から学んだことをベースに、独学で勉強し、高齢者施設で実践を重ね、実際に高齢者の方や職員の方、認知症の方などから得た経験や教訓を活かして、オリジナルのプログラムを作りました」

それまで、一般の方向けの傾聴ボランティアの養成講座はありませんでした。鈴木さんは、講座の開設だけでなく、学んだ人がすぐに傾聴ボランティアとして活躍できる場所を探して回りました。

「珍しさも手伝って、たくさんのメディアが取り上げてくださったおかげで、最初は受け入れてくれなかった施設でも徐々に受け入れてくれるようになりました。

本当は一人暮らしの高齢者のご自宅で活動できたらと思っていたのですが、行政が受け入れてくれず苦戦しました。現在は社協さんやボランティアセンターさん、包括支援センターさん経由で、個人のご自宅に訪問できるようになってきています」

最初は関東を中心に始めた活動ですが、ある独立法人の特例でいただいた助成金をもとに、北海道から九州まで、全国各地で養成講座を開くことができ、ついに全国区になっていました。
傾聴ボランティア2
「約20年やってきて、今でこそ傾聴という言葉が珍しくなくなりましたが、逆に傾聴を謳う講座や活動が世の中に溢れてしまいました。当協会のプログラムは、傾聴ボランティアのための傾聴を学ぶプログラムです。

そして、理論だけでなく、実践的に教えていること。実際に私が現場で学んだことをプログラムに反映しているので、講座が終わったらすぐに現場で活かすことができます。認知症の方に対する傾聴の仕方を学べるのも、当協会のプログラムの強みです」

傾聴ボランティアになるにはどうしたらいいの?

傾聴ボランティアとして活動するためには、傾聴ボランティア養成講座を受講し、社会福祉協議会やボランティアセンター、地域包括支援センターに登録する必要があります。

傾聴ボランティア養成講座は、同協会のホームページから通信講座の申し込みができるほか、同協会の講座を受講した方が全国各地で講座を開いているので、そこに参加するという方法もあります。

「社会福祉協議会やボランティアセンター、地域包括支援センターに登録しても、実はまだまだ傾聴ボランティアの依頼は少ないのが現状です。ただ、お話相手のボランティアの依頼はあるので、積極的にお受けしています」

受講したあと、志を同じくする人同士でボランティアグループを作る人もいれば、すでにあるボランティアグループに入る人もいます。

ボランティアを目指す人ばかりではなく、自分や家族のために受講する人も多いようです。

「当協会では、60代の方を中心に、主に50代〜70代の方が活躍しています。やはり、子育てや定年退職をきっかけに始める方が多いですが、東日本大震災の後は、20代、30代の若い方の受講が急増しました。また、『傾聴を仕事に活かしたい』という30代、40代の方の受講も増えています」

受講生の中には、介護、医療、教育職の方も少なくありません。

「最近は教育機関でも傾聴を学ぶところが増えていますが、まだまだ時間的に少ないため、現場に出てから学び直しを目的に受講される方も少なくありません。お医者様や看護師さん、大学の先生が受けに来ることもあるんですよ」

すでに現場で働いている専門職の方でも、受講後には、「役に立ちました」「目からウロコでした」という感想を述べられる方が多いのだそうです。

傾聴ボランティア3

傾聴と傾聴でない聞き方は何が違うか?

「日常会話と傾聴の一番大きな違いは、自分が主人公ではないこと。相手がどんな方だとしても、傾聴は相手が主人公になります。

日常会話は自己中心的ですが、傾聴は相手がどんな気持ちなのかを考えながら聞き、相手の気持ちを考えて、その気持ちを受け止める。そこが大きな違いです」

確かに、家族や友人たちとの会話は、自分が話したいことを話し、自分が聞きたいことを聞いています。

「人間は24時間傾聴することはできません。傾聴で大事なのは、主人公は誰かをきちんと認識して、反論しないこと。共感してあげること。10分でもいいから、家族や友だちの話を聞いてあげてみてください。

短期間で関係が変わるはず。自分の聞き方を変えることで、相手が心地よくなる。相手は心地よいと、心地よさをお返ししてあげたくなるんです」

傾聴を学ぶことで、「家事を全くしない頑固な夫が優しくなった」「認知症の母の笑顔が増えた」「退職後、同期会で久しぶりに会った同僚に変わったなって言われた」など、人間関係に変化が起きたという受講生が大勢いるといいます。

「傾聴を学ぶと、自己変革が起こせるんです。傾聴すると、『話を聞いてもらえて良かった』『あなたに会えて良かった』と、いった言葉が自分に返ってきます。だから嬉しくなって、また聞いてあげたくなる。相互支援なんです」

ボランティアは相手のためだと思いがちですが、自分のためにもなるんですね。

「特に高齢者は、誰かに話を聞いてほしい。そこに反論や意見は要りません。旅立ちの前の人生の総括を行う。それも終活です。私は、人生の最終章に立ち会うのが傾聴ボランティアだと思っています」

たとえその話が愚痴だとしても、意見やアドバイスは要りません。「よく頑張って来られたんですね。大変でしたね」と労ってあげることが大切です。

「相手が若い方なら、対応の仕方はまた違います。若い方は道に迷っているケースが多いので、『私はこんなときこんな風に生きてきた。だから私はこう考えるよ』『私の場合はこうしたら良かったけど、どんなもんだろうね?』というIメッセージで話すこと。けっして意見を押し付けず、人生の先輩として、道標になれるといいですね」

傾聴はすべての人間関係の基本

「人権擁護委員会、家政裁判所調停員、統合失調症やうつ病の子どもや配偶者を持つ人など、これまでいろいろなところから講座やセミナーの依頼がありました。

傾聴の仕方は相手によって変わりますから、その度に私は猛勉強です。『自殺防止のための傾聴の仕方を教えてほしい』とか、専門的な依頼もたくさん来ました。それもこれも、傾聴は高齢者のためだけではなく、人間関係の基本だからです。傾聴は大人にも子どもにも必要です」

小学校など教育機関からの要請もあり、鈴木さん自ら講座を開いて教えています。

「日本の教育は『聞く』というプログラムがないから、上手く話が聞けないために、人との関わりが苦手な子どもが増えているように思います。

インターネットが発達して、メールやSNSでやりとりすることが当たり前になりましたが、人間関係は向き合ってこそ。直接的なふれあいが大事だと私は思います」

今後は、「若いお母さんたちに傾聴を広げたい」と話す鈴木さん。

「夫婦でも親子でも、違う人間だから違う意見であって当然です。でも意見する前に話を聞いてあげることが大切。子どもは高齢者と違って発展途上だから、意見やアドバイスしてあげることは間違いではありません。

でも、子どものうちにしっかり話を聞いてもらえることの心地よさを知っておくことで、話を聞くことの大切さが分かる大人になれるんですよ」

保育園や幼稚園の先生にとっても、傾聴の知識や技術は重要かもしれません。

お話をお聞きして、傾聴を学ぶことで、夫婦関係も親子関係も友達関係も職場の人間関係も良くなるような気がしてきました。

傾聴ボランティアに興味を持った方は、NPO法人 日本傾聴ボランティア協会のホームページをのぞいてみてください。

(取材・執筆:旦木 瑞穂)

この記事の取材協力先

NPO法人 日本傾聴ボランティア協会
http://www5d.biglobe.ne.jp/~AWFC/
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タグ: 定年退職 定年 仕事 ボランティア 傾聴

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