樹木葬・樹林墓地を巡る【3】 桜葬・東京

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樹木葬・樹林墓地を巡る 第3回 エンディングセンター

  • エンディングセンター樹木葬、墓地
  • 桜の写真

近年、樹木葬(樹林墓地)が新しい墓のかたちとして、新聞やテレビなどで紹介されることが増えていますが、まだ樹木葬という言葉が広く知られていなかった2005年から、樹木葬に取り組んできたNPO団体があります。

7年を経て、会員数は2,000人を超え(※2012年10月末現在)、同じ樹木葬を求めた会員同士がつながり、意気投合し、今では自主的に古道ウォークのサークルや、俳句の会を運営するまでになっています。

お墓という枠を超えて、新たな縁でつながり合うという供養の未来を感じさせるNPO法人エンディングセンター(以下、エンディングセンター)の樹木葬「桜葬(さくらそう)」を、東京都町田市に訪ねました。


2,000人を超える会員が集う樹木葬

  • エンディングセンターの樹木葬「桜葬」 エンディングセンターの樹木葬「桜葬」
  • すぐに完売した樹木葬 250の区画がわずか2年半足らずで完売

東京都町田市の鶴川といえば、白洲次郎が戦時中に疎開し、武相荘(ぶあいそう)という洒落た名前の居を構えた場所として有名で、今でも当時の趣を残して保存され、見学者がゆるやかな時間の流れを過ごしています。

そんな武相荘から車で10分ほどでしょうか、新興住宅街としても開けた真光寺町に、大規模な民間霊園「町田いずみ浄苑」があります。平成元年(1989年)に開苑し、今では4,500以上の区画を有する大型の霊園です。

墓石が多く立ち並ぶ霊園の一角に、芝生の緑が鮮やかなスペースが目に入ってきます。1本の大きな桜の木が芝生の中心に立ち、そばにはベンチもあることから、時折、お墓参りの人が一休みしている姿を目にします。実は、この区画がお墓。今では2,000人を超える会員が集う、樹木葬「桜葬」がはじまった場所なのです。

自分たちの問題として墓の問題に取り組んできたNPO団体

  • 合同祭祀の写真 毎年4月に開かれる合同祭祀、桜葬メモリアルに集う会員さん
  • 募集中の樹林墓地の区画 現在募集している「樹林墓地」の区画。費用は目安として1人40万円~

現在、全国でみられる樹木葬・樹林墓地の多くが、寺院や石材店が企画し運営するものです。その中にあって、エンディングセンターの樹木葬は、NPO団体が企画した樹木葬です。

エンディングセンターは、1990年「21世紀の結縁と墓を考える会(後に、21世紀の結縁と葬送を考える会に改称)」として発足した市民団体が元になっています。家代々で継承するお墓や、家族が支え受け継ぐことを前提とした供養の方法だけでは、核家族や独居者が増える中で、社会的に対応できないことを予見し、他人の問題ではなく、自分たちの問題として行動してきた団体です。

キーワードは「半匿名性」「ゆるやかな共同性」

  • 半匿名性 個別区画は分からないが、地下では限定され、近くの共同銘板に名前が刻まれる「半匿名性」
  • ゆるやかな共同性 お墓をきっかけとした新たな縁が生まれ「ゆるやかな共同性」などが特徴となっている

家代々で継承する一般的なお墓は、継承者がいる間は問題ないのですが、ひとたび継承者がいないという状態になれば、墓地を返還して更地に戻すか、なかには無縁墓として寂しい状態になってしまうケースもあります。

エンディングセンターの樹木葬は、墓石のお墓を「一戸建て」とするならば、「集合住宅」という考え方です。一人ひとりの区画が格子状に区切られているのですが一見すると境目が分からず、ひとつの大きなお墓というイメージです。

エンディングセンター代表で東洋大学教授でもある井上治代さんはこれを「半匿名性」「ゆるやかな共同性」をその特徴にあげ、もし継承者がいない区画があったとしても、ひとつのお墓をみんなで守っていく考え方と説明してくれました。

春に行われる桜葬メモリアル

  • 春の合同祭祀 春の合同祭祀では、仏教キリスト教・無宗教それぞれの祈りが捧げられる
  • 合同祭祀への参加は自由 合同祭祀に参加するも自由、参加しないも自由。お互いの価値観を尊重する考え方

桜の咲く4月。毎年開かれる合同祭祀「桜葬メモリアル」が開かれました。慰霊祭では、なんと、仏教・キリスト教・無宗教と異なる3つのかたちで祈りが捧げられます。

無宗教として「メモリアルに寄せる詩」が朗読され、牧師さんがキリスト教の礼拝を行い、お坊さんが読経して法要するのです。その光景は日頃あまり見ることのないことですが、どの祈りでも席を立つ人はおらず、思い思いに祈りを捧げている姿が印象的でした。

エンディングセンターが大切にしていることの一つが「選択できる」ということです。この合同祭祀に参加することも、参加しないことも自由。会員向けに行われる様々な行事への参加も自由という、お互いの価値観を尊重し合い、自ら選択するという考え方が2,000人を超える会員さんに支持されている理由の一つであると感じました。

お墓を縁とした新しい縁・墓友(はかとも)

エンディングセンターのある会員さんは「お墓をきっかけにしてできた友達だから墓友(はかとも)よね」と笑いながら話をされていました。

子供がいない、または嫁いでしまって家のお墓を継ぐものないという悩み・・・独居の不安・・・家の墓には入りたくない・・・様々な悩みや思いを共有して語り合うことのできる人のつながりが、樹木葬というお墓をきっかけとして広がっていることに驚きます。

墓地の継承者がおらず、縁が途切れ無縁墓となってしまうお墓の増加が全国的な問題として懸念されるなかで、新たな縁を生み出す場となっているエンディングセンターの樹木葬に、お墓の未来の新たなページを見た思いがしました。

エンディングセンターの樹木葬「桜葬」は、2011年末に大阪(高槻市)にも新しく完成しました。次回の連載で、詳しくお伝えしたいと思います。→樹木葬を巡る 第4回 桜葬・大阪

お問合せに関して
東京(町田市):NPO法人エンディングセンター 町田事務所
大阪(高槻市):NPO法人エンディングセンター 関西事務所

所在地 町田いずみ浄苑内
企画 NPO法人エンディングセンター
樹木葬の開設 2005年
費用 1名40万円、2名50万円など
(樹林墓地の例。区画や樹木葬の
種類によって変動)
樹木葬の総募集数 2,626 ※2012年9月30日時点

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