定年後の人生がより良くなるサービスを提供したい

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少子高齢化社会が現実となった日本で、将来や老後を真剣に考え始めた人が増えてきたこともあり、当たり前のように見聞きするようになった「終活」。

そんな「終活」という言葉ができる以前の2003年から、「エンディング」業界の先駆けとして、インターネットを介した葬儀社紹介・お墓紹介などのサービスを行ってきたアクトインディグループ・せいざん株式会社の池邊文香さん。

これまで8000件を超える葬儀供養弔いの相談を受けてきた実績を持ち、机上だけでない老病死の生の声を知るスペシャリストです。

若干30歳とは思えない密度の濃い経験とキャリアを持つ池邊に、「終活」「エンディング」サービスへの熱い思い、そしてメディア「エンパーク」がどのように生まれ、何を目指しているのかなどを聞きました。

プロフィール

お話を聞いた専門家

池邊 文香(いけべ あやか)

  • せいざん株式会社 取締役
  • エンディングコンシェルジュ
  • 実相寺青山霊廟 運営

関西大学社会学部マス・コミニュケーション学科卒。大学在学中にアクトインディ株式会社のインターンとなり卒業後に入社。その後、子会社として分社したせいざん株式会社の取締役となる。青山外苑前の実相寺「青山霊廟」納骨堂の管理運営、終活・弔い・相続に関するスペシャリストとして活動。「大人のためのbetter lifeマガジン エンパーク」のプロジェクトリーダー。その他、地域創生や女性起業家事業など多方面に渡って活躍中。

「普通」という価値観が好きじゃなかった

まず、シニアマーケティング事業・終活業界のキャリアスタートについて教えてください。

シニアマーケティング事業は、大学3回生の時にインターンとして入ってそのまま入社したアクトインディ株式会社(以下、アクトインディ)に所属していた頃から携わっています。

現在、所属しているせいざん株式会社(以下、せいざん)は、長年アクトインディが積み重ねてきたシニアマーケティング事業を、丁寧に広めて育てていこうということで子会社としてスタートした会社です。

今年で3期目になりますが、アクトインディ時代を含めると、かれこれ10年ほど、この業界一筋ということになりますね。

この業界に携わりたいと思ったきっかけは何かありますか?

もともとは「メディアに携わりたい」という強い思いを持ったことが原点になります。

高校時代にさかのぼるのですが、「みんな違ってみんないい」ということを世に広めていきたい…それにはどうしたらいいのか?…と考えたことが一番のきっかけですね。

どうしようと考えた結果「広めるにはメディアだな」と思い、すぐ行動を開始しました。

え、高校生の時に「みんな違ってみんないい」を広めたいと考えたの?

私は小さい時から、「普通」という価値観があまり好きではありませんでした。

親が離婚した人、同性愛者の人、病気や障がいをもつ人、収入が少ない人、など様々な友人・知人がいましたが、多くの人が社会から「普通ではない」とカテゴライズされてしまう。ちょっとした違いだけで、否定されたり除外されたり。

「普通はこうだから」とか「普通でなければならない」という定義に雁字搦めになっている人や、普通から外れてしまって自分を認められない人などを見て、それは違うのではないかと強く思ったのです。

現実を知るほど「生きにくい世の中」だと思った

確かに「普通」は集団心理から生まれた都合主義の産物かも…でも高校生ですごい!

しかも当人も「普通じゃない」と思われていることに引け目を感じたり、自分や周りを責めたりしますよね。

私自身も、みんなが好きなものに興味を示せなかったり、家庭で少し悩む事があったり「みんなと違う」ことを感じるなど、幼少期はそれを理由にいじめられることもあったため、自分だけでなくこんなにも多くの人が悩んでいると感じて。

そんな現実を知れば知るほど「なんて生きにくい世の中なのだろう」と。

みんな違うのは当然だし、「普通」の枠に無理やり押し込めるのはやはり間違っているという結論に達しました。

そして「多様な価値観の素晴らしさを世の中に発信したい」と考えた結果、メディアをやりたいということに繋がったんです。

そういう気持ちにさせた一番の要因は何だったと思います?

高2の頃、世間で同世代の練炭自殺などの自殺関連のニュースが多発していました。

当時は2001年の9.11テロなど世界情勢も混沌としていましたが、それに比べると日本は戦争もなく、世界的に見れば裕福で幸せな部類だろうに、なぜこんなに自殺者も多く、多幸感が低く、不安感も大きいのか。

この苦しい現状は、前述の「普通ってなに」につながっているのでは?と考え、ゆえに「生き辛さ(いきづらさ)」が原因ではないかと思いました。

なるほど。その強い思いから今に至る経緯をもう少し教えて

大学に通いながらテレビ局、ラジオ局、新聞社、ミニコミ誌、編集プロダクションなど、バイトという立場でしたが、実際に多種多様なメディアに触れる機会に恵まれました。

そこで感じたのは、テレビや新聞などのいわゆる王道のオールドメディアには、発信力はあるけれど自由度が低いということでした。

「大切だから発信したい」と思っても、会社の意向や方針などがあって難しい場面も多々ありますからね。

それでは私のやりたい「多様な価値観があることを広める」ことには繋がらない。私のやりたいメディアはそうではない…と悩んでいた時、iPhoneが登場したんです。

悲しみや困りごとの相談を受けた経験は財産

iPhone登場…といえば2007年ですね

今後はインターネット主流になるぞと直感的に思って、いろいろと調べているとアクトにたどり着きました。

「メディアで情報発信し、人々を幸せにする」というアクトのコンセプトが、私の思いと合致していたことも大きな理由です。

現在のアクトインディは、子育てサイト「いこーよ」のイメージが強いのですが、私が新入社員時に一番注力していたのは「葬儀サポートセンター」というウェブサービスでした。

お客様に葬儀や弔いの相談を受けて情報や知識を提供し、ご希望があれば信頼できる葬儀社を紹介するというサービスです。

葬儀・供養業界ネット事業の先駆けとして携わった印象はどうでした?

既にそのサービスは軌道に乗っていましたが、私は業界が全くの未経験だったので、まずは相談員としてスタートしました。

一度も会ったことのない方の相談を受けることの難しさ、悲しみを受け止める辛さを感じつつも、微力ながら力になれることの喜びが支えでした。

また、相談を受けるだけでなく、実地調査から葬儀のコーディネートまで、様々なお手伝いを経験することで知識も増えましたし、大きく成長させてもらいました。

喪主の方や葬儀屋さんの生の声を聞くことができた貴重な体験は、今の私の大きな財産となっています。

葬儀や供養はマニュアル通りにはいかないですよね

人が亡くなるというのは大半が突然に起こることですから、ご相談は緊急性が高くて切実なものが多くなります。

一つとして同じ内容の案件はありませんから、こちらも心してお受けしなければなりません。

これまで相談は8000件以上のご相談に携わってきましたが、大切な人との突然の別れにパニック状態の方や、何もわからず困っておられる人が本当に多くいらっしゃいましたね。

「明日は無限ではなく有限だ」と感じることが大切

お葬式のことを熟知している一般人はそうそういませんよね

相談員として、それを肌で感じました。

知識のないまま悲しい別れを迎え、流されるまま葬儀をして後悔をしている方も多くいらっしゃいましたし。

2011年の東日本大震災時には、想像を絶する辛い体験をされた方のご相談もたくさんお受けし、今でも忘れられない出来事として残っています。

自分の無力さを痛感しながらも、少しでも力になりたいと相談員みんなで考えたのが、これまで積み重ねてきた知識や情報をメディアとして発信しようということでした。

東日本大震災がきっかけで「エンパーク」が生まれたのですか?

「エンパーク」が2012年にスタートするきっかけのひとつになったと思います。

また、私たちがお手伝いできる方の数は限られています。知識さえあれば、情報さえ持っていれば、より多くの方が悲しみや苦痛が少し和らいだかもしれない。

後悔して欲しくないという思いから、少しでも多くの人に届けるためにインターネットメディアとして立ち上げました。

私たちがご相談に応じてきた生の声や実際のエピソード、知識・経験を詰め込んでいます。

だから「エンパーク」にはリアルが感じられるのですね。

明日が延々と続くと思っている人と、明日は有限であると思っている人とでは、その時の行動や言葉が変わってくると思います。

「明日は無限ではなく有限だ」と感じた時、人は、どんな風に生きていきたいか、何をしたいか、何のために生きているのか、と真剣に考えることができると思います。

そういった「自分の生き方」を考えらえる人が増えることが、良い社会につながるのではないかと確信しています。

「生き辛さの解消」に繋がる社会を目指す

では、「エンパーク」について今後の方向性など教えてください

前身「ここからはじまるエンパーク」は老病死をテーマに、60代以降の方々が知りたいこと、知っておいてほしいことを啓蒙するサイトとして運営してきましたが、定年世代仕事や学びなどの新コンテンツを加えて「大人のためのbetter lifeマガジン・エンパーク 」としてリニューアルしました。

老病死がテーマなのは変わらないのですが、「老病死」ジャンルは内容も広く深く、言葉としてもパンチがあり、スムーズに受け入れてもらえない可能性もあるなと。

たくさんの人に知ってほしいと悩んだ末、「老病死」とは「命を考えること」だなと思い、「命=life」「よりよい命を考える=better life」としてわかりやすくしました。

また、1500本以上あるオリジナルの情報記事も検索しやすくデザイン変更しました。

「エンパーク」に出会ったことで、定年世代の方のその後の人生がより良くなってもらえたらいいなと思いながら作っています。

最後に、せいざん株式会社のこれからについてお願いします。

「エンパーク」のテーマである「人生をより良くする」ためには、生きがいを持って生活していくことが最も大切だと思っています。

せいざんは「これからの老病死をデザインする会社」としてサービスを提供していますが、その延長線上が「違いを認めあえる」「生き辛さの解消」につながっていれば幸せです。

世の中の「普通」に左右されるのではなく、本当に伝えていかなければいけないこと、価値のあるサービス、知ってほしい情報、正しい知識を提供できる会社でありたいですね。

しかしながら、まじめにやると本当に儲からない業界なので…頑張ります(笑)。

( 取材・文章:ライター たなべりえ )

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