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家族や恋人、親しい友人など、「大切な人を亡くしてしまった」という体験をして深い悲しみに苦しむ人がいたら、側に行って寄り添い、支えていくことができればと思ったことはありませんか?
株式会社ジーエスアイは、死別などによって生じる深い悲しみや苦悩=グリーフをケアするグリーフケアを広めるため、グリーフサポートに関するさまざまな取り組みを行っている会社です。
今回は、グリーフサポートについて、代表を務める橋爪謙一郎さんにお話をお聞きしました。
「大切な人を亡くしてしまった」という体験をすると、人は深い悲しみや苦悩から、心にぽっかりと穴が開いたような気持ちや喪失感を感じることがあります。
そういった精神的・身体的な感覚や気持ちを「悲嘆=グリーフ」といいます。グリーフは目に見えるものではありませんが、確実にストレスやフラストレーションとして溜まっていきます。
グリーフにしっかりと向き合わず、感じていることを表に出さないまま、大切な人が亡くなる前の生活に無理に戻ろうとすると、身体や心にさまざまな影響が出てくることがあり、「自分はおかしくなってしまったのではないか」と感じる人も少なくありません。
橋爪さんは、「大切な人を亡くしてしまった」という体験をした人は、身体、感情、人間関係、人生、認知の5つの部分に影響を受けるといいます。
「眠れなくなったり、逆に寝すぎてしまうようになったり、感情を上手くコントロールすることができなくなってしまうことは割と知られています。
人間関係や人生にまで影響を及ぼしてしまうこともあります。しかしあまりよく知られていないのは、認知に対する影響です。
グリーフを抱えてしまっているせいで、時間や約束が守れなくなってしまったり、間違った電車に乗ってしまうなど、日常生活に支障をきたすケースも少なくありません。
高齢者の場合は認知症と診断される人も多いのですが、実はグリーフによる影響の可能性があります」
「大切な人を亡くしてしまった」とき、心の中にどんな感情や考え方が湧き上がったとしても、それはごく自然な反応です。「今は自分に優しくするとき」と考え、自分の気持ちを無理に抑え込まないことが、グリーフによる影響を大きくしないために重要です。
「大切な人を亡くしてしまった」という体験をした人は、グリーフを抱え込まないために、まずは何をしたら良いのでしょうか。
答えは、「死別の現実を受け止める」ことです。図のように、グリーフと折り合いをつけるためには、ピラミッド状になっている下から順番に満たしていかないと、上のニーズは満たせません。
例えば、大切な人が亡くなった現実を受け入れていない人は、周りからサポートを受け入れることができないということです。
「2011年にあった東日本大震災では、2000名を超える人が今も行方不明になっています。行方不明者の家族は、頭では『もう助かっていないだろう』と分かっていても、実際に亡骸を見ていないし触っていないので、実感がありません。
だから気持ちの整理をスタートできないのです。2001年のアメリカの同時多発テロ事件、9.11でも、骨が一欠片でも出てきた人は、大切な人が亡くなったことを認識できます。
しかし、全部溶けて無くなってしまった人は、亡くなったことが信じられません。そうなると、気持ちの整理をつけるのに時間が掛かるだけでなく、現実と向き合うために何か他の方法が必要になるのです」
そして、図を見てわかるように、一人でも死別の現実を受け止めることはできますが、一人で「グリーフと折り合いをつける=もとの生活に戻る」ことは難しいのです。
株式会社ジーエスアイでは、グリーフを抱える人をサポートする3つのメニューを用意しています。
セミナーとグループカウンセリングを合わせた形式で、大切な人を亡くしたとき、「どうしてこんなに辛くて苦しいのか」ということを理解するため、まず今の自分の心の状態を知ろうとするところから始めます。
それができたら、同じように大切な人を亡くして参加している人たちに、今の混乱した気持ちや考えを聴いてもらったり、他の参加者の話を聴いたりします。そうすることで、少しずつ心の整理をしていきます。
グリーフについての基礎的な知識を得ながら、「10のタッチストーン」という道しるべを使って、悲しみと向き合いながら自分のグリーフについて探求する、全12回のワークショップ。
同社が「グリーフサポートバディ」と認定した相談員が、1対1で相談を受けているほか、グリーフカウンセラーによる専門的なカウンセリングも受け付けています。
上記3つは実際にグリーフを抱えている人へのサポートメニューですが、この他に、グリーフサポートを実践するために必要な知識やスキルを身につけるセミナーも実施しています。
コースは、グリーフサポートの基本を身につける「ベーシック」。
グリーフサポートを実践するためのより深い知識やスキルを学ぶ「アドバンス」。
個別のケーススタディを行い、大切な人を亡くしたどのような状況の方にも対応できる力を身につける「プロフェッショナル」の3コース。
プロフェッショナルコースを受講し終えると、「グリーフサポートバディ認定試験」の受験資格が得られます。
「グリーフサポートバディ認定試験」に合格した後は、継続教育として、プロフェッショナルトレーニングコースで学びを続けていきます。
最初の受講のきっかけは、「大切な人を亡くしたから」という人が少なくありません。受講しているうちに「自分の体験を活かしたい」「誰かの役に立ちたい」と考えるようになり、上級コースへ進む人も多いようです。
「グリーフサポートは本来、宗教者がやっていた『供養』にあたるものだと思います。
1周忌、3回忌、7回忌と、徐々に時間がのびているところを見ても、お坊さんにはお経を上げてもらうだけではなく、話を聞いてもらったり相談したりといったカウンセリング的な役割が存在していたのだと思います。
しかし今は、宗教や葬儀、法要などを拒否されてしまう方が少なくありません。
拒否されてしまうと、グリーフを抱えたままになってしまう恐れが出てきます。そういう方のために用意したものが、グリーフサポートです」
橋爪さんは、グリーフサポートを提供するポイントが日本各地に広がるよう、「グリーフサポートセミナー」の開催や「グリーフサポートバディ」の育成を進めています。
「バディ(Buddy)という言葉には、仲間、相棒という意味があります。グリーフの旅を1人で進むのは辛くて恐いこと。
グリーフサポートバディは、グリーフを抱えた人が辛い現実を受け入れ、深い悲しみと折り合いがつき、亡くなってしまった方との日々が良い思い出に変わるその日まで、共に寄り添って支えてくれる人であって欲しいと思っています」
ワークショップやセミナーの詳しい内容やスケジュールは、株式会社ジーエスアイのホームページに掲載されています。
大切な人を亡くした経験がある人もそうでない人も、グリーフサポートに少しでも興味を持った人は、同社のホームページをのぞいてみてはいかがでしょうか。
(取材・執筆:旦木 瑞穂)
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