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人生100年と言われる時代。近年、定年退職後の過ごし方に注目が集まっています。
その中のひとつに、「生涯学習」や「学び直し」がありますが、ひとことで学ぶと言っても、その内容や方法、目的はさまざまであり、人それぞれ。
学ぶことに興味はあるけど、年齢を重ねた今、どんなことが学べるのか、どのように学べばいいのか、学ぶことによって何が得られるのかなど、気になっている定年世代は少なくありません。
2004年に日本初のインターネット学習のみで卒業できる大学として設立された八洲学園大学について、学長兼学校法人八洲学園理事長を務める和田公人さんにお話を伺いました。(※本記事は2018年6月の取材内容です。記事中の役職名は取材当時のものです。)
八洲学園大学が開学した2004年。当時はすでに高齢化社会とは言われていましたが、まだ今ほど「生涯学習」や「学び直し」という言葉は聞かれませんでした。
しかし、同大学の建学の精神には、「『教育の原点は家庭である』ことに基づいた、家庭教育、学校教育、社会教育の融合を図り、もって生涯学習社会を実現すると同時に、すべての人が高等教育の機会を得られることに貢献する。」とあります。
すでにミドル・シニア層を視野に入れた開学だったのでしょうか。
「当初からシニア層も視野に入っていました。ただ、当時はまだインターネットやパソコン普及率が低く、特にシニア層は、インターネットで大学を卒業できるということにピンとこない方がほとんど。それに加えて、パソコンを操作できる方が少なかったため、まずはパソコンやインターネットに抵抗のない若い学生からサポートのノウハウを貯めて、徐々にシニア層に拡大していこうと考えました」
ミドル・シニア層の学生数は、年によって増減はあるものの、2004年の開学当初は50代で23人、60代で3人でしたが、2017年では50代で65人、60代で32人とじわじわと増加。70代以上の方が入学される年もあります。
「最近は大学進学率が50%と言われ、高等教育全体で約70%の方が進学していますが、今の50代の方の時代は、大学進学率が20%くらいでした。さらに上の団塊の世代になると、もっと低くなるだけでなく、大学に行った方でも安保闘争に巻き込まれ、ほとんど学んでいない方もいます。そのため、『大学を卒業したい』『学びたい』というニーズが強い方が多いです」
今後、スマートフォンの普及が進み、中高年のインターネット利用率が上がれば、インターネット大学の認知も高まりそうです。
同大学で単位を取る方法は、2種類あります。
1つは、レポートを複数回提出する方法。もう1つは、通学かネットで一定回数授業に出席し、テストを受ける方法。授業はライブ配信されているので、大学と同じ時間に自宅で授業を受けることができます。
「ライブ配信中は、同じ授業を誰が受けているかが分かるため、『今日は誰々さんまだログインしてないな』と思ったら、メールや電話で声をかけ合うこともできます。学生しかログインできないSNSも用意しているので、分からないところを教え合ったり、連絡を取り合うこともできます」
通信教育にありがちな孤独感を感じることは減らせそうですが、インターネット大学は、通学する大学よりも自己管理能力が必要になりそうなイメージがあります。
「通学する大学は決まった時間に起きて行かなければならない。インターネット大学は起きてパソコンの電源入れなければならない。それだけの違いです。いつまでに卒業したいとか資格を取りたいとかでなければ、そんなに大変ではないと思います。基本的には7割ほど出席すれば単位は取れるので、通学の大学と同じです」
ミドル・シニアの方に一番人気があるのは、図書館司書の資格。同大学の資格取得者のうち、約3割を50代以上が占めています。
「本好きが講じて、本そのものや図書館の成り立ち、分類の仕方など、本に関することを体系的に学びたいと考えて入学される方が多いです。資格取得までにかかる期間は半年から1年ほどですが、シニアの方の場合、プレッシャーになってしまうので、はっきりいつまでに取得するということを意識しない方が良いかもしれません」
目標があるに越したことはないですが、特に定年退職やリタイヤされた方の場合、時間的にはゆとりがあるので、楽しんで学ぶことの方が重要です。
インターネット大学の先駆けとしてノウハウを積み上げてきた同大学は現在、ミドル・シニア層のサポートに特に力を入れています。
操作方法などで分からないことがあるときは、サポートセンターに電話をすれば遠隔操作で教えてもらえるようになりました。これならパソコン操作に不安がある方も安心です。
「2004年の開学以来、ずっと在籍している方がいますが、学部はそのままで科目は毎年入れ替えているので、飽きずに学び続けられるようです」
同大学の最長在籍年数は12年ですが、一度取得した単位は有効なので、退学して再入学すればエンドレスで在籍できることになります。とは言え、14年間在籍し続けるということは、よほど居心地が良いということでしょうか。
「人は、どこかに所属しないと気持ちが落ち着きません。もちろん家庭がベースにありますが、リタイヤ(や定年退職)された方は、会社という居場所から開放されて居場所を失ってしまった。所属するのは地域のボランティアでも趣味のサークルでもいいのですが、小、中、高校と所属してきた学校という場所は、心が休まる居場所だったのではないでしょうか。その安心感に近いものが得られるため、大学を選ぶ方が少なくないのだと思います」
同大学には日本国内だけでなく、海外にも学生がいます。観光地としても楽しめる横浜にキャンパスがあるため、履修期間の終わりが近づくと、「横浜で集まりませんか」と声がけする先生もいると言います。
「大会社の元社長と20代そこそこの若造がクラスメイトということも少なくないですが、同じ学生という立場なので偉そうにできません。でもそれが良いと言います。若い学生との交流や、若い頃の感覚に戻って大学生活を満喫できるということは言うまでもないですが、シニアの学生さんは、利害関係も収入も肩書も関係ない、学生という立場が心地良く、学生であること自体に価値を見出されているように思います」
社会に出ると、学生の頃のように利害関係無しで人と付き合うことが難しくなります。一度社会に出たからこそ、かけがえのない人やモノ、時間の価値が分かるのかもしれません。
「学びたい」という気持ちに年齢制限はありません。「やっぱりあのときやっておけば良かった」と後悔する前に一歩踏み出してみませんか。「学びたい」と思ったときが始めどき。憧れの大学生活を楽しむつもりで、「まずは半年」「1科目だけ」など、自分のペースで気軽に学んでみてはいかがでしょうか。
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