人生100年時代をどう生きる? 定年世代のリカレント教育が重要な理由

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人生100年時代」といわれるように、平均寿命が伸び、多くの人が100歳まで生きることが現実味を帯びてきた今、人生設計の描き方は昔と大きく変わってきています。

60歳で仕事を引退して、残りの人生はゆっくりと過ごす、といった人生設計は、もはや過去の話に。100歳まで生きると仮定すれば、50歳の時点でようやく折返し。60歳になっても、まだ40年も人生が続くことになります。

定年を迎えた後、どのように生きていくのかは、多くの人たちが直面する大きな問題です。まだまだ身体は元気だし、社会と関わって生きていきたい。今までできなかった新しいことをはじめたい。そんな人たちから今、注目を浴びているのが「リカレント教育(学び直し)」という考え方です。

■定年世代に向けたリカレント教育とは?

「リカレント教育」は聞き慣れない言葉かもしれませんが、「リカレント」とは、「反復、循環、回帰」という意味の英語です。「リカレント教育」は、日本語では「回帰教育」「循環教育」などと表現され、就労と就学を繰り返すことを指しています。 また、文部科学省によれば、リカレント教育は次のように定義されています。

「『学校教育』を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、『職業上必要な知識・技術」を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである』

わかりにくい表現かもしれませんが、つまりは「学び直し」ということです。

高校や大学を卒業して教育は終わり、ではなく、個人の希望や必要に応じて教育機関に戻り、再び学ぶことができる教育システム。それがリカレント教育のあり方です。

今までの世間の常識だと、学校に行って学ぶのは10代や20代の若い人たちでした。そうした常識のせいか、新しいことを学ぶのは若いほど有利で、年齢を重ねると新しいスキルや能力を学びにくくなると考えている人は少なくありません。

たしかに年齢とともに新しいことを覚えるスピードは落ちるといわれていますが、その代わりに今までの経験や知識と関連付けることで、より効率的に学ぶことができる、という研究結果も出ています。

年齢を重ねたからといって、新しいことを学べない、学ぶのに不利だということはないのです。

■人手不足解決のカギは定年世代?

日本の少子高齢化はますます進んでいます。子どもが減り、平均寿命の長寿化が進む中で、社会における高齢者の割合はさらに増加していきます。

少子高齢化が進むと、どんな問題が起こるのでしょうか。医療や年金の問題なども深刻ですが、特にインパクトの大きい問題が「人手不足」です。

日本の働き手、つまり生産年齢人口は1995年をピークに減少をはじめており、総人口も2008年から減少しています。

働き盛りの世代の数が減少している中、60代で仕事から引退してしまうのでは、どうしても働き手の人数は減っていきます。

また、加速している女性の社会進出も、こうした人手不足が背景にあります。「女性が結婚した後は専業主婦として家庭に入る」という慣習や価値観は、女性の活躍機会を奪っているだけでなく、貴重な働き手を失っている、ということでもあるのです。

人手不足は、実はきわめて深刻な社会問題です。そもそも働いてくれる人がいなければ、会社は事業を行うことはできません。事業を行えなければ日本の経済成長も停滞し、医療や年金などの社会保障も破綻してしまいます。

暗い話ばかりをしてしまいましたが、希望はあります。それこそが定年世代の活躍です。

個人の寿命が長寿化し、人生100年時代が到来しつつある今、60代はまだまだ元気で活力のある世代です。

近年、定年を70歳に引き上げる議論も行われていますが、実際のところ、「まだまだ働けるのに」と思いながら、定年を迎えている方も少なくないのではないでしょうか。

そんな定年世代の方々に再び活躍してもらい、社会を活気あるものにするためにも、リカレント教育への注目が集まっています。

■日本でのリカレント教育の実態

本来のリカレント教育では、文部科学省の定義のように「フルタイムの」就労と就学を繰り返すことが推奨されています。

しかし、「フルタイム」ということは、就学している間は仕事をしないということになります。これは転職が日本よりも一般的な欧米を前提にした定義になっていますが、日本では長い間、終身雇用制度が一般的だったため、厳密な意味でのリカレント教育はあまり普及してきませんでした。

もちろんこれまでにも、会社を辞めて大学に入学し直したり、夜間の大学に通う「社会人学習」といったものはありましたが、やはり少数であったことは否めません。

そこで現在、日本の場合は、退職や休職せずに学ぶこともリカレント教育に含むものとして、さまざまな環境の整備がはじまっています。

現在は政府も積極的にリカレント教育の普及に動き出しており、希望する社員が70歳まで働けるようにするという政府の方針のもと、厚生労働省は45歳以上の会社員を対象にリカレント教育の講座を始めました。

また、文部科学省も、女性や定年世代の活躍による新規就業者の掘り起こしとして、オンラインの遠隔授業、地方公共団体や地方大学、専門学校などの取り組み促進に動いています。

■リカレント教育の主な例

リカレント教育の普及に向けて、大学や専門学校、民間のスクールなど、多くの教育機関で受け入れが広がっています。ここでは、定年世代を対象にした具体例を見ていきましょう。

大学・大学院

まず大学・大学院の場合は、定年世代を対象にした「特別枠」を設けているところが増えています。特別枠では専門のコースや特別選考などを用意しているほか、「シニア奨学金」などの制度を利用できるところもあります。

定年世代向け入試のある主な大学

関西国際大学(兵庫県)
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吉備国際大学(岡山県・兵庫県)
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敬和学園大学(新潟県)
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作新学院大学(栃木県)
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聖学院大学大学院(埼玉県)
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東京基督教大学(千葉県)
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長崎ウエスレヤン大学(長崎県)
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長野大学(長野県)
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身延山大学(山梨県)
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定年世代向け入試のある主な大学院

明治大学大学院 商学研究科(東京都)
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東京経済大学大学院(東京都)
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聴講生制度

また、大学生として入学するのは難しいという人の場合、聴講生制度という方法もあります。学びたい講義だけに参加できる制度です。学びたい分野が明確に決まっている人や、時間の余裕がない人もおすすめです。

ただし、聴講生制度の場合は、単位取得はできません。単位や学位取得にこだわらず、興味のある分野だけを学びたいという人向けの制度になっています。

オープンカレッジ(公開講座)

オープンカレッジは学外に向けた公開講座のこと。学外向けということもあり、気軽に受講することが可能です。年間で4万講座以上が開かれており、大学のホームページや各自治体の広報誌などで告知されています。近くの大学や、気になっている大学の情報をチェックしてみてはいかがでしょうか。

民間のスクール(資格取得)

取得したい資格がある場合、民間のスクールに通うのも有効な選択肢です。資格を持っていれば定年後であっても就職の可能性がグッと高まるので、活躍し続けたい人には特にオススメです。

特に定年世代に人気のある資格としては、宅地建物取引士、介護士、ファイナンシャルプランナー、行政書士、調理師などの資格が挙げられます。

■いくつになっても学び続けることが大切

数十年前と比べて、社会のあり方は大きく変わりました。

かつては「一億総中流社会」と呼ばれた時代もありましたが、現在は多様性の時代です。年齢や性別、国籍などに縛られず、多種多様な人々がそれぞれの持ち味を生かしながら活躍する時代に入っています。

また、昔の60代と今の60代も違います。平均寿命が伸びている今の時代、60歳といえば、現役世代に負けず元気な人も大勢いらっしゃいます。新しいことを学びたい、社会の役に立ち続けたいという人も少なくありません。

ところで、英国の金融機関「Skipton Building Society」の調査では、定年退職後・引退後に暇だと感じ始めるようになるのは、「10ヵ月後」という結果が出ています。


「定年を迎えたら思いっきり好きなことをしよう」「のんびり過ごそう」と考えている人も多いと思いますが、やはり社会と関わっていないと「生きがい」は感じにくいようです。

知らないことを学ぶのは、いくつになっても楽しいもの。定年後は何をしようと悩んでいる人は、ぜひリカレント教育で新しいことを学び、社会と積極的に関わっていってはいかがでしょうか。
(ライター・ディレクター:玉田光史郎)

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