60歳でも遅くない!赤字の家計こそキャッシュフロー表が必要な理由

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丸尾さん1

将来やお金のことを調べていると「キャッシュフロー表」というワードに辿り着くことが多いと思います。書籍や雑誌、ネット記事でも頻繁に目にしますし、自動で簡単にキャッシュフロー表を作れる便利なサイトもありますよね。

それだけ注目度が高く、必要だと言われるキャッシュフロー表ですが、作ったことがない、よくわからない…という方も多いことでしょう。

そこで、年間100本以上のキャッシュフロー表を作成しているファイナンシャルプランナーの丸尾健さんに、キャッシュフロー表の意味と重要性についてお聞きしました。

将来に不安を持ちながらも「なんとかなる」とスルーしている人、家計やお金に無関心な人に読んでほしいアドバイスをたくさんいただきました。

お話を聞いた専門家

丸尾 健(まるお けん)さん

ファイナンシャルプランナーの丸尾健さん

  • ファイナンシャルプランナー
  • 株式会社N&Bファイナンシャル・コンサルティング 代表取締役
  • 会社HPへ

相談業務を中心に活動している「実務家ファイナンシャルプランナー」。FPとして年間の新規面談件数は約120組、累計相談件数は1400件以上。個人から企業まで、相談者それぞれに応じたマネープランの作成、マネープランに基づいた資産形成アドバイスを行う。キャッシュフロー表は年間100本以上を手がける。

キャッシュフロー素材

キャッシュフロー表は「今後のお金の年表」

そもそも「キャッシュフロー表」とは何なのでしょう?
シンプルにわかりやすくお答えすると「今後のお金の年表」です。

これから先の人生で、お金が増えていくのか、減っていくのか。大きなお金が必要な時期はいつなのか、どこにピンチがあるのか。…などの資金面での将来のことが一目でわかるお金の表になります。

「今後のお金の年表」とはわかりやすいですね。
興味のない人やよくわからないという人に、年間の収支を云々とか、ライフプランにあわせて推移を見て収支をチェックする云々…とお伝えしてもピンとこないですからね。

「今後のアナタのお金の流れがハッキリ見える年表ですよ」と言えば、老若男女の皆さんに伝わりやすいので、いつもズバリとこの言葉でお伝えしています。

では、なぜキャッシュフロー表が必要なのでしょう?
これからの人生や将来について、誰もが不安を抱えていると思います。その不安の原因はなんだろうと考えると、やはり資金面が大きいですよね。「お金の見通しが立たない」ということが将来不安の中で一番に挙げられると思います。

ですから将来不安をなくすためには、お金の見通しを立てることが必要になります。そして、お金の見通しを立てるためには、今後のお金の動きを可視化しなければなりません。それができるのがキャッシュフロー表ということになります。

定年世代にこそ作成してほしい理由

結婚や子ども誕生時に作るイメージがありますが、定年世代からでは遅いでしょうか?
全く遅くないですよ。むしろ定年世代の人にこそ、積極的に作成してほしいと思っています。確かに、結婚した時や子どもが生まれた時など、人生のターニングポイントで作成される方は多いですよね。

もちろん早いうちから人生設計を立てることが理想的だと思います。しかし、若いうちは生活がどんどん変化しますし、お金に関して不確定要素がたくさんありますから2〜3年おきに作り直すことも大切です。

それに比べて55歳以上の場合は、将来を見据えたリアルな設計が立てやすくなります。子育ても一段落し、仕事のこと、年金のこと、親の状況もわかってくる年代ですからね。

定年世代はよりリアルなキャッシュフロー表が作れるということですね。
そうです。若い時に比べ、その後の人生において不確定要素が少なく、より明確なお金の健康診断ができると思います。

とはいえ、人生100年時代ですから55歳だとしても単純計算で残り45年もありますからね。まだまだ現役世代ですし、60代から起業される方も多くおられるご時世です。

「残りの人生」というには早いですから、若い時と同じく、いろんな可能性を考えながら作成していきたいですね。

FP相談1

選択肢を迷う時はそれぞれを比較してみる

雇用延長、早期退職、転職、起業、進学…など、状況は様々ですよね。
昔のように60歳で隠居されている人を探す方が困難ですね。それに、この年代が考えなければならないのは働くことだけではありません。家をどうするのか、リフォーム・住み替えを考えるのか、などの住居の問題。さらに、離れて暮らす親はどうするのかといった親問題など、考えることが多すぎる年代だと思います。

選択肢が増えすぎた現代では、あらゆる面で今後の人生に悩まれることでしょう。そういった場合にもキャッシュフロー表があれば、お金の流れを見極めることができ、その後の生活のヒントが見つかると思います。

早期退職して起業したいけど、安定した暮らしも捨てがたい…等と悩んでいる人は作成のタイミングが難しそう。
いえいえ、そういう時ほどキャッシュフロー表が役に立ちます。例えば、単純に2パターン「早期退職&起業バージョン」と「延長雇用&退職引退バージョン」を作成して比べてみるといいのです。

もっと欲張りになって、色んな選択肢バージョンを作って比較してみるのも楽しいと思います。それぞれの選択肢でメリットやデメリット、リスクなどが一目瞭然でわかるので、ぜひ作ってもらいたいです。

何種類か作って比較するのはいいですね。
まだまだ新しいことにチャレンジできる年齢ですが、20代30代の頃のような無茶はできない。そして何をするにもお金は必要になりますから、老後も見据えた計画が必要です。

いつまで働けばいいのか…という大切な部分を明確化できるのもキャッシュフロー表の利点です。しっかり自分の現実を見極めることが、成功の第一歩ですし、将来の安心にもつながりますよ。


現実を知らず逃げている人のほうがコワイ

キャッシュフロー表は「現実を知る」ことになるので少し怖い気がします。
ファイナンシャルプランナー(以下:FP)という仕事柄「現実を見たくない」「知りたくない」という声をよく耳にします。現状から目をそらし、なんとかなるだろう…と思っている人が本当に多くいらっしゃいますね。

このままでは絶対に良くない!という危険な状態の人ほど、現実から逃げている傾向にありますが、それこそ大きな間違いです。ほったらかしで上手くいくことなど、ほとんどありません。

わかっているけれど、見て見ぬ振りしちゃう人が多そう…。
例えば、コロナ禍で給料が減って住宅ローンを払うのが辛くなった…という人は多いと思います。それを放置したがゆえに、手放さなければならなくなったという悲しいことが起こってしまいます。

しかし、相談に来ていただけたら、ローンの切り替えという手段もあります。銀行に相談に行けばなんとかなる場合もあり、回避する手立ても教えてくれたりします。

とくに住宅ローンは数十年前の高い金利で借りていた場合、見直すことによりローン負担が大幅に軽くなることが多いのです。

FP相談2

住宅ローンの借り換え相談を含め、不安がある人こそ早めに相談が大切ですね。
たった一回、返済が遅れただけで、住宅ローンは借り換えできなくなる場合がほとんどです。もうそうなったら、どんどんよくない方向へ突っ走ってしまいますよ。

そうなる前にキャッシュフロー表を作って立て直したり、事前相談で借り換えしておけば、ローン軽減だけでなく貯蓄までできたのに、なぜ放っておいたの…という人たちを多くみました。

ピンチになると、正常な判断が難しくなるかも。
そうですね。生活が安定している平常時のうちに、しっかりマネープランを立てることが大切です。ここで、自分の現在と未来の「お金の計画を把握できるキャッシュフロー表が必要だ」と繋がってくるのです。

また、明らかに「このままだと危ないな」と思う人には「ブレーキの効かない車に乗ってギリギリ運転しているような状態ですよ」とお伝えします。事故を起こすことが事前にわかっているのに、故障車に乗りつづけているという。本当にコワイですよね。

なるほど、それはとってもコワイです…。
その故障車から降りて、修理に出すのか、バスやタクシーに乗り換えるのか、徒歩で移動するのか。今の生活の修正・方向転換をすることになりますが、正面衝突の大事故を回避する方がよほど重要ですよ。

ギリギリセーフで相談に来られた方は「もっと早く相談に来ればよかった」と、みなさん口を揃えておっしゃいます。

なぜFPに作成してもらった方がいいの?

では実際に作成するためにはどんなデータが必要ですか?
下記が一般的なキャッシュフロー表の作成に必要な項目です。相談者によって用意するものは異なりますが、お金に関する資料をまとめて提出するとよいでしょう。

キャッシュフロー表作成に必要なもの

・源泉徴収票
・給料明細票(給料所得がある場合)
・確定申告書(確定申告された場合)
・保険証券(任意保険の加入履歴)
・不動産の情報
・金融資産の内訳
家族のこと(家族構成・収入の有無など)
・生活の支出(家計簿・収支の内訳)
 

最近は自動作成してくれるキャッシュフロー表メーカーがあるので自分で作れますよね。
確かに、収入・資産・生活費などを入力するだけで、あっという間にキャッシュフロー表が出来上がります。本当に便利だなあと思います。しかし、現実はそんなに甘いものではないんですよね。

数字上で「これだけ不足です」「これだけ必要です」という簡単な問題点は指摘してくれますが、その問題点の原因がドコにあるのか、何を改善すれば良いか、という本当に知りたい具体案は出てきません。

そうですね。生活費もざっくり概算で入力してしまいますし。
それが一番良くない。実際にキャッシュフロー表を作る時、明らかに収支が合わないことがとても多いんですよ。再度確認してみたら、自分たちでも把握しきれていない出費がザクザク出てくる。

それに、自分の生活状況だけでなく、離れて暮らす両親のことや、独立した子どもの生活状況など、あらゆることを引っくるめて考えないと、正確な数字は出てこないのです。

それはネット入力では難しいですね。
手取りの給料と出費総額からの生活費の分析は、プロの目からでないと難しい部分が多いと思います。ですからFPなど専門家に作成を依頼する方が望ましいのです。

ちなみに、精密なキャッシュフロー表を作れる人はあまり多くありません。経験値はもちろんですが、依頼者からしっかりヒアリングできるチカラも必要なんですよね。 丸尾さん3

他の人の情報を聞くことで勉強にもなる

正確に作れるFPや専門家に依頼することが大切ですね。
正確に作れるというよりも、いろんな分野を網羅できているFPにお願いすることが大切だと思います。僕の場合は住宅メーカー出身なので、家のことやリフォームのこと、家族のことなどの知識があるため、キャッシュフロー表の作成が得意なのです。

それからこれが一番のポイントなのですが、やはりキャッシュフロー表をたくさん作っている人にお願いすることをオススメします。

というのは、作り慣れているからですか?
それもありますが、数多くのキャッシュフロー表を手がけているということは、それだけ多くのお客様と接しています。つまり、多種多様な情報を持っていることになるのです。

色んな情報を持っている人には、「他の人はどうされていますか?」「このような場合はどんなケースがありますか?」という質問がたくさんできるというメリットがあります。

色んなケースを聞きたいですから、それは大きなメリットですね。
人生は十人十色、誰一人として同じではありません。自分の人生は自分で切り開かなければなりません。しかし自分の選択があっているのか、他に選択肢はないのかと皆さん悩まれます。

他人を真似することはできませんが、迷った時に様々なケースを聞いて参考にすることはできますよね。そういった面においても、FPや専門家に相談するメリットは大きいと思います。

まずは信頼できるFPを見つけることからはじめてはいかがでしょう。そして不安な気持ちを打ち明けてみてください。どんな小さなことでも気軽にご相談くださいね。


(取材・文章:ライター 田鍋利恵)

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