【若槻せつこ】和ブームの立役者(2/4)

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のこすかち
若槻せつ子(わかつきせつこ)
打掛をはじめとしたビンテージ着物に込められた伝統の技術や文化を後世に残したいと奮闘するファッションディレクター。自社ブランド「ローブ・ド・キモノ」を発信する若槻事務所代表。

和ブームの立役者

「KIMONOドレス」はすべて一点ものだ。

レンタルの注文を受けると、糸をほどき、お客さんの寸法に合わせて縫い直す。使い終わったものは丁寧にクリーニング。古い打掛をリメイクしたものなので、取り扱いには細心の注意を払う。

だんだん口コミが広がり、お客さんが増えてくると、他にも着物ドレスのレンタルを始める店が現れ始めた。

「流行はみんなで作るもの。独り占めするものじゃないから、真似されても構いません。自分のところは特別で、オートクチュールで作ってるっていう自信とこだわりがあったから、いいやって思ってました」

東京・世田谷ギャラリーの好評を受けて、2009年、ジェアール名古屋タカシマヤにて「KIMONOドレス展」を開催することになった。
打ち掛け3
それに合わせて「KIMONOドレス」の写真集、「若槻せつ子のローブ・ド・キモノ」の自費出版を決める。これらに先駆けて、2008年には、玉川タカシマヤアートサロンで「KIMONOドレス展」を開催した。

「日本にはこんなに素晴らしいものがあるのに、なんでドレスの本ばかり出すのですか?うちのお客さんに聞くと、『着物は好きだけど、かつらや白塗りが嫌だ』と言われます。ナチュラルメイクにして、かんざしを生花にして、着物の色を赤、白、紫、黒などのはっきりした色ばかりじゃなく、パステルカラーを取り入れたら、きっと反響がありますよ」

ある日「25ansウエディング」の編集長に話すと、「花嫁の着物」という和装ウエディング本の出版が決まった。掲載されているのはすべて振袖か打掛。モデルは白塗りをせず、髪は生花で飾った。

「うちのお客さんは、『KIMONOドレス』を着て氷川神社や日光東照宮で写真を撮っているのに、なんで雑誌に掲載されている撮影場所はホテルやゲストハウスばかりなの?神社仏閣だっていいじゃない。和風の本も出してくださいよ」

またあるとき「ウエディングブック」の編集長に話したところ、「日本の結婚式」という本の刊行が決定した。

当時はちょうど「ラストサムライ」が上映され、人気を博していた頃だった。

「気が付いたら和ブームが来ていて、お店にお客さんが来なくなっていました。みんな『KIMONOドレス』じゃなくて、打掛に行ってしまったんです。でも、それでいいって思いました」

打掛との再会と1度目の自費出版

タレントの藤原紀香さんは、若槻さんの「KIMONOドレス」を10年以上愛用していた。

「当時紀香さんは、NHKのまごころコンサートという番組の司会をしていました。多くの大物演歌歌手の方が出演されていたんですが、みなさんものすごく高価な着物を着ているんですね。そうなると普通のドレスでは霞んでしまう。だから『KIMONOドレス』だったんです」

藤原紀香さんには、日本テレビ「ベストヒット歌謡祭」の司会や、NHK「紅白歌合戦」審査員で出演した際などに、「KIMONOドレス」の衣装協力をしている。2016年の、片岡愛之助さんとの結婚式のときは、本手描友禅作家の秋山章先生を紹介した。

「紀香さんが結婚式で着た打掛は、屋号の松島屋に嫁ぐということで松の柄。山口百恵さんも、白地に古典的な松と鶴の柄の打掛を着ました。相良刺繍をメインに竹屋町刺繍という豪華な打掛でしたが、その後200枚売れたと聞いています」

2009年、ついに「錦のしあわせ 花嫁のために 若槻せつ子のローブ・ド・キモノ」を自費出版した。

「まだ私がデザイナーとして駆け出しの頃、あとでゆっくり読むために、雑誌の切り抜きを集めていた箱がありました。この本を作るために、資料になるものがないかと思ってその箱を開いたら、打掛を紹介した記事が出てきたんです。洋服のデザイナーを目指していた頃なのに、なんでとっといたんでしょうね。そういう役割だったのかなと思いました」

打掛との運命的な再会だ。

「『錦のしあわせ』には一切説明を入れず、大きく写真を載せました。出版社の方は文章を入れたがりましたが、見た人の感性に任せて、何となく伝われば良いと思ったんです」

説明の代わりに、百人一首の句が添えられているほか、打掛の「ビフォー写真」と「KIMONOドレス」に生まれ変わった「アフター写真」が掲載されており、リメイクを視覚的に捉えられる。
打ち掛け5
そして同じ年、ジェイアール名古屋タカシマヤにて「若槻せつ子KIMONOドレス展 錦のしあわせ」を開催。

以降も数多くの展覧会や講演会、トークショーなどに出演している。

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