定年世代が知りたい建て替え・リフォームのこと 建築家さんに聞きました(後編)

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代理人として交渉やアドバイスまで担う存在に

例えば、金子さんにリフォームを依頼した場合の流れを教えてください

まずはクライアントさんに、どんな家にしたいか、どんなお部屋にしたいか、という具体的な要望をしっかり伺います。それに加え、これが一番重要なのですが「どんな風に住みたいか」「どんなことが好きか」「どんなものに興味があるか」といったパーソナルな部分を、ご家族それぞれにお聞きします。

その後、今住んでいるお宅へもお邪魔させていただき、どういう生活をされていて、どこが不満でどこが気に入っているかなど、目で見ながら教えてもらいます。

かなりしっかりと事前ヒアリングされるのですね

他にも、持っている洋服やコレクションしているものなども、許可をいただいて見せてもらいます。例えば、奥様は料理が好きだったり、家庭菜園が好きだったり、吹きガラスが趣味だったり。ご主人は自転車やバイクが趣味だったり、オーディオ機器が充実していたり。

しっかりヒアリングさせてもらうと、希望に沿った設計に必要な材料がたくさん出てきます。単純な要望を伺うだけでなく、好きなものや大切にしていることを聞くことで、その人の生活や家での動き方がわかってきて、想像が膨らんで提案しやすくなるんです。

要望をしっかり伝えられるのは安心だと思います

みんなそれぞれ違いますし、家族の形も関係性も様々ですよね。それなのに、家族構成と間取りの希望だけで決めてしまうと、想い描いたものと違うものになりかねません。

しかし、私たち建築士だけでは家を建てたりリフォームすることはできません。不動産屋さんや工務店さんなど、様々な力が一つになって希望の家ができるわけですが、私たち建築士はそれぞれの架け橋になれたらいいなと考えています。

デザインや設計だけでなく、クライアントさんの代理人として交渉やアドバイスまで担う存在になりたいですね。

代理人として交渉してもらえるなんて、とても心強い!

クライアントさんのデメリットになることをできるだけ排除し、少しでも希望の家に近づけるようなサポートができればと思っています。

ハウスメーカーさん、工務店さん、内装屋さん、リフォーム会社さんなど、たくさんの窓口がありますが、それぞれ役割は異なります。それをちゃんと把握した上で、適材適所に依頼できているかということも大切ですね。

そういう場合も、ぜひ私たち建築士に相談してほしいです。希望を聞いた上で各所への橋渡しをしつつ、客観的かつ論理的に説明することができると思います。

少し先の未来の生活を想像すると希望を伝えやすい

建築士さんへ希望を上手に伝えるコツなどありますか?

リフォームや建て替えの場合、希望や思いがたくさんあっても、それを具体的にうまく伝えるのはなかなか難しいと思います。

そんな場合は、現時点の生活を基準にした希望を出すのではなく、10年後や20年後など未来のことを想像してもらうとイメージしやすくなります。

今は子育て中心の生活だけど10年後はどうなっていたいか、夫婦がこれから居心地よく過ごすためにはどんな空間がいいのかなど、今の生活よりも少し先のことを想像するとスムーズに希望が出てくることが多いと思います。

なるほど、未来のことを考えると希望を出しやすそうです

未来の生活を想像しながら、家を作っていくことはとても楽しいことですよね。それぞれ個人の希望を言い合うことで「お父さん、そんなことが好きだったんだ」とか「お母さん、そんなこと考えてたんだ」など、ご夫婦や家族間でもお互いのことを知らなかったという発見もあったりして面白いんですよ。

希望をしっかり伺うことができたら、たくさんの提案ができますし、より幅広いプランになって、選択肢も増えますよね。失敗防止にもつながりますし、完成した後の生活や人生もうまくいくきっかけにも繋がると思います。

その後の人生がうまくいく家をつくれることが大切ですよね

家の設計をすることは、ただ家を建てるだけ、リフォームするだけではない「その後の生活を豊かにする」「よりよく人生を過ごしていく」という大切な命運を左右する作業だと思っています。

定年世代だけでなく、若い世代にもその後の人生が豊かになる家に住んでもらいたいと願っています。コミュニケーションが広がる孤立しない社会を建築から支えていきたいというのが私の目標です。

住む環境ひとつで気持ちも心もガラリと変わります。ぜひ私たち建築士に未来の希望を相談しに来てくださいね。

(取材・文章:ライター たなべりえ)

この記事の取材協力先

金子智子建築設計室 一級建築事務所

http://www.satokane.com/

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