定年前に知っておきたい農業カンパニー「マイファーム」の取り組み

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もともと野菜づくりや園芸に興味がある方は、定年退職や子どもの独立などで、時間やお金の余裕ができたことをきっかけに、畑を借りて家庭菜園を始めたり、本格的に農業を勉強するために学校に行く方も少なくないと思います。

そこで今回は、「農業って楽しい!」と思う人、思う瞬間を生み出し広げていくことを使命に掲げ、「自産自消」できる社会を目指して事業を展開している「マイファーム」の田村征士さんに、「マイファーム」の取り組みや農業を志す人々の目的や変化などについてお話を伺いました。

マイファームは「農業って楽しい!」を生み出し続ける会社

マイファームは、野菜づくりをしたい方向けに体験農園(貸し農園)や、農業を学び、農業を仕事にしたいと考えている方向けに週末開講の社会人向け農業スクール。

美味しいものを作って販売や提供をしたい方向けに直営農場(生産・加工・飲食)や、農業経営者の方向けに農業経営のサポート。

法人企業向けに参入支援や事業化サポートのほか、農業体験や研修など、農業に関する幅広い事業を行っている会社です。

「体験農場や学校などの取り組みが目立ちますが、その根底にあるのは、『自産自消』できる社会を作ることです。

例えば夕飯の食卓に、自分自身や家族、もしくは友人が育てた作物が上っている家庭がどれほどあるでしょうか。

自分や自分に近い人が育てた作物が食卓に上れば、きっとその作物にまつわるエピソードが語られるはずです。私たちは、そういう話題が日常的にコミュニケーションの中にある社会にしたい。

そういう社会って、絶対に豊かな社会ですよね。『自産自消』できる社会づくりが、マイファームという会社の活動の目的です」

マイファームが設立したのは2007年。ちょうど10年が経ちました。

「農業従事者の高齢化が深刻で、少子化のため跡継ぎもおらず、使われない農地が増加しています。

そんな現状を目の当たりにした代表の西辻が、『農業界を盛り上げたい。新しい活力をこの会社から起こしていきたい』と考えて、起業しました。

日本全国で40万ヘクタールあると言われている使われなくなってしまった農地『耕作放棄地』が、私たちの活動によって減っていくようにしたい。それがマイファームとして取り組んでる一番大きな取り組みです」

耕作放棄地を減らすため、マイファームでは、「自ら耕作放棄地を管理する」のではなく、「耕作放棄地を活用してくれる人づくり」を進めています。

「私たちの活動によって農業に興味を持ってくれたとしても、そういう人全員をずっとお世話し続けることはできません。

でも、農業に興味を持ってくれた人たちが、いろいろな場所に散らばって、耕作放棄地を活かして農業をしてくれるなら、私たちのミッションは進んでいきます。

例えば、子どもの頃にマイファームの農体験イベントで野菜に触れたことがずっと忘れられなくて、就職活動のときに農業の道を選んだという人がいたとしたら、就職先がマイファームとは関わりのないところでも、きっかけづくりができれば私たちとしては万々歳です」

体験農園・農業スクール利用者はどんな人?

体験農園を利用する人は、どんな人なのでしょうか。

「体験農園の場合、契約者の平均年齢は45歳くらいですが、契約者がお父さんお母さん世代で、その子どもやおじいちゃんおばあちゃんの、3世代で利用している場合が多いです。

1回限りのサービスではなく、1年間野菜づくりを楽しむというものなので、平日はおじいちゃんおばあちゃんが利用して、休日はお父さんお母さんと子どもが利用するなど、曜日や時間帯によって利用者は変わります」

体験農園は、家庭菜園の延長線上ですが、農業スクールは、本格的に農業を学びに来ている人が多いのでしょうか。

「週末農業スクールなので、仕事をしながら学べるのが特徴です。

受講生はいろいろな方がいますが、30代のサラリーマンで、もともと野菜づくりが好きで農業の道への転職を検討している方や、定年間近の50代で、早期退職して農業を始めたいと考えている方が多いです」

最近は、元気なシニアが増えています。定年や子どもの独立をきっかけに、農業を始める定年世代は増えているのでしょうか。

「定年世代の方は増えています。ただ、定年後だと、農家として農業を楽しむレベルに到達するにはちょっと遅いです。

家庭菜園を楽しむレベルで満足される方は、体験農園を利用される場合が多いですが、実際に生産をして、農業を生業としたいと考えるている方は、早期退職を検討していたり、定年前から動き出す方がほとんどです。

例えば、若い頃から家庭菜園を楽しんでいたとか、50代の頃から郊外に土地を借りて作物を育てていたなど、農業を志すバックボーンがあって、動き出す方が多いですね」

では、定年世代の方が農業を志す目的や目標はどんなところにあるのでしょうか。

「農業で生計が立てられるレベルに達する成功事例もありますが、『農業で儲けてやろう』という考えの方は、上手くいかないケースが多いです。

心から農業が好きで、『作物が愛おしくて仕方ない』『野菜づくりが本当に楽しい』ということが前提にないと厳しいですね。

あくまでも作るのが目的で、『自分が丹精込めて育てた作物を、家族や友人に食べてもらえたらそれでいい』という方がほとんどです」

最初から儲けようと思うのではなく、「好きだからやるんだ」という方が結果、成功するようです。

農業界で活躍する定年世代

マイファームでは、農業スクールの受講生や、体験農園の利用者だった人が、しばらくしてスタッフ側に回るというケースが少なくありません。

「野菜づくりを楽しめた実感が、今度は『楽しさを伝えたい』になるんです」

スタッフの年齢は、早期退職や定年退職後の50代〜70代くらいの方、時間があるときに好きな農業に携わりたい主婦の方、将来農業を志している20代の方の3層に分かれています。

「定年世代の方は、上手く存在価値を示せるような位置づけにして差し上げると、すごく輝かれます。

でも、一歩間違うと歯車が噛み合わなくなる。だから仕事を回すときには、どんな位置でどう活躍してもらおうかをよく考えて配置するようにしています。

身体を動かして何かを成すということに関しては、高い経験値があって、身体が覚えているから、すごく効率のいい作業をされる方も少なくありません。

どこかの会社や仕事の中で一定の役職まで務めた方だと、仕事をする上で相当なノウハウや経験値をお持ちです。その能力は、野菜づくりにおいても、体験農園を運営するという上でも、ものすごく役に立つ場合が多いんですよ」

必ずしも農業の経験がなくても大丈夫。マイファームでは、人とコミュニケーションを取るのが好きだという方、野菜づくりそのものが好きで、勉強したい、もっと広めていきたいという方を求めています。

「まもなく、都市の農地が扱いやすくなる制度の改正がなされようとしています。

今までは、税制を優遇することで、都市の農地を守ってきましたが、あくまでも地権者である農家が、農作物を生産をしなければ優遇は受けられませんでした。

それが、私たちのような民間の会社が農地を運営しても、これまでのような農地の取り扱いになるように改正されるようです。今後は、社会の動きに注力して、ニーズに合うサービスを考えたいと思っています」

都市に農業ができる場所が増えれば、農業をやってみたかった人たちが挑戦してみようと思ういいきっかけになります。

「最近は、短時間勤務やテレワークなど、働き方の多様化が進んでいます。

この動きが社会的に広まれば、今までは人生の大半が仕事でしたが、半分の時間は主たる収入を得る本業に費やすけど、残りの半分の時間は野菜づくりなど、好きなことに使えるという時代が来るかもしれません。

『半農半X』や『農ライフ』という言葉がありますが、ライフスタイルが大きく変化するような動きも起こってくるかもしれないので、変化に合ったサービスを提供していきたいと考えています」

今は、本業の仕事に平日のほとんどの時間を費やしている方が大半ですが、このまま働き方の多様化が進んで、本業だけに縛られなくて良い社会になればいいですね。

お金に関係ない活動や趣味、勉強など、好奇心や探究心を満たしたり、自由に好きなことができる時間ができれば、女性も男性も、年齢や性別に関係なく、豊かな気持ちで生きられるようになるのではないでしょうか。

土や草花、作物など、自然に触れていると、心が穏やかになります。

農業に興味のある方、野菜づくりが好きな方は、ぜひ一度、マイファームのサイトを覗いてみてください。家庭菜園から本格的な農業まで、レベルに応じたサービスが揃っていますよ。

(取材・執筆:旦木 瑞穂)

この記事の取材協力先

マイファーム
https://myfarm.co.jp/

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