納骨堂のLINE見学予約受付中!動画解説付き【東京都港区の納骨堂/青山霊廟】
「ずっと家にいて終活が進まない」 「そろそろ納骨したいのに見学ができない」 そんなお悩みを少しでも解決すべく、青山霊廟(東京都港区北青山2-12-9・外苑前徒歩2...
いくつになっても親しい仲間や家族とともに、美味しい食事を楽しみたいと思いませんか?
しかし、高齢になったり介護状態になったりで身体が不自由になると、レストランなどの外食を諦めてしまう方が少なくありません。なぜなら、通路の広さやバリアフリーなど、ハード面での問題と、レストラン側の受け入れ体制や他のお客さんとの兼ね合いなど、ソフト面での問題があるためです。
そんな中、2008年に横浜にオープンした中華レストラン「風の音(かぜのおと)」は、そういった問題を全てクリアし、高齢者や介護状態にある方を受け入れられるレストランとして地域に根ざし、今では県を超えて訪れるお客さんも増えているのだとか。
「風の音」の店長、広瀬基子さんに、詳しいお話を聞いてきました。
広瀬基子店長
「風の音」は、横浜市内を中心に、高齢者介護施設を運営する株式会社アイシマが開いた中華レストラン。相鉄線三ツ境駅から歩いて15分ほど商店街を抜けた閑静な住宅街にある、落ち着いた雰囲気の一軒家レストランです。
「株式会社アイシマが運営している施設の利用者さんやそのご家族からの要望に応える形で、『風の音』は生まれました。ここの2階もサービス付き高齢者住宅になっているんですよ」
利用者さんやそのご家族から、「たまには親を連れて外食したいけど、車椅子に対応してくれるお店がなかなかない」という声があったため、「それなら」と同社が自ら作ったのが始まりです。
テーブル間隔を広くとりゆったりとした店内
入口から店内まで、全て段差のないバリアフリーになっていて、車椅子が通りやすいよう通路も広く、ゆったりしています。株式会社アイシマが運営する高齢者介護施設は、横浜市内を中心に40施設ほどあります。その中から2施設づつ順番に、「風の音」へ車で外食に来るそうです。
「火曜日は午後から音楽療法を行っているので、施設の方が車でここへ来て音楽療法を受けた後、おやつを食べて帰られるのが日課になっています」
いつも同じ施設の中で過ごしていては息が詰まってしまいます。適度な距離をドライブできて、いつもと違う場所で、別々の施設から集まったいつもと違うメンバーとの外食は、施設利用者さんの良い刺激にもなりそうです。
最近では、障害のある子どもを持つ家族や支援学校などから、団体で来店されるケースも増えており、静岡県や山梨県から観光バスで来られることもあるそうです。
テーブルは車椅子のままでも食べやすい高さになっています
海外からの問い合わせも増加しており、これまで韓国、中国、アメリカ、フランスからの視察や取材に対応したそうです。
「全体的にバリアフリーで、食事の状態もいろいろ対応できて、車椅子対応のトイレが複数あって…というレストランはまだまだ少ないということなのでしょうね」
事前に伝えておいてもらえれば、刻みやとろみ、ミキサーや減塩にも対応できます。
「食事の状態の対応は、追加料金無しで行っています。もともと、高齢者介護施設を運営する株式会社アイシマが開いたレストランということで、一般的な中華よりは、減塩・油控えめになっていますが、高齢のお客様が増えていて、そのままでは食べられない方のために、要望があれば対応するようになりました」
本格的な味わいの日替わりランチ(排骨飯)
シェフは上海出身。横浜中華街で長年、腕を奮ってきたベテランです。
「中華は大量に作れて、大皿で気軽にみんなでわいわい食べられるのがいいと思います。フレンチでは少し堅苦しくて、イタリアンでは年齢層的に受け入れ難いかなと。
実は株式会社アイシマは、「風の音」をオープンした数年後に和食レストランも開きましたが、2〜3年で閉めることになってしまいました。やはり和食は繊細で見た目の美しさも重要ですし、一品づつ盛り付けの手間もかかるので難しかったようです」
「風の音」は、近所に住んでいる方や、勤めている方も利用します。少し駅や商店街から離れていますが、ランチタイムには50席ほどある席が、8割ほど埋まりました。
「オープンから数年間、一般のお客さんは『ここって高齢者介護施設専用なの?』『そういう人しか来ちゃだめなの?』と戸惑っていらっしゃいました。
いつも施設の車が停まっていて、車椅子の高齢者が頻繁に出入りしているので、そう思われても仕方がないですよね。それでも、チラシを打ったり、ポスティングしたり、営業さんが地域を回ったりして、じわじわと受け入れられていきました」
今年で10周年。当初こそ赤字続きでしたが、ここ数年は黒字化しているとのこと。一度地域の人に受け入れられてしまえば、本格的な味と温かい雰囲気で愛されるレストランとして定着してきたことは頷けます。
「10周年イベントも企画していますが、毎月何かしらイベントはやっています。『地域を大切にしなさい』が代表の相澤の口癖なので、地元出身の音楽家による楽器の演奏会や、介護の勉強会などで利用してもらって、「風の音」が地域の交流サロンみたいになっていけばいいと私たちは思っています」
最近は「風の音」を、認知症カフェとして利用したいというお話もあるそうです。
「ひとくちに認知症と言っても、可愛らしい方、いつも怒っている方、いろいろな方がいます。ここのお客さんは、理解した上で来店してくれています。
いつか自分もなるかもしれませんし、認知症を身近に感じられることは、悪いことではありませんよね。そういう場を提供できていることは、嬉しいことだと思っています」
閑静な住宅街に佇む「レストラン 風の音」
食べることは喜びであり、楽しみです。それが「外食」となれば、なおさらわくわくしするものではないでしょうか。
「杖をついて来られた方が、帰りに忘れることが多いんですが、それくらい食は楽しいものであり、大切な命をつなぐものです。私たちにとって、接客することは仕事なのに、『美味しかった。ありがとう』とお客さんに笑顔で言われます。喜んでもらえることが励みになって、私たちもまた、笑顔で接客ができます」
食べることは生きることに直結しています。しかし、それがただ単に「栄養を摂取する」という行為になるのではなく、できれば最期まで「喜び」や「楽しみ」を伴うものであり続けて欲しいと思います。今回取材して、私自身、「高齢や障害で身体が不自由だから」と諦めなくても、本格的な中華料理が味わえるレストランがあるということを知り、嬉しくなりました。
こういったレストランや飲食店が今後ますます増えてくれることを願います。
(取材・執筆:旦木 瑞穂)
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