60代・70代が活躍!家政サービスとは?

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最近増えている家事代行サービスで多くの50代〜70代の女性が活躍しているように、家政婦(夫)として現役で働いているミドル・シニア女性も少なくありません。

今回は、家政婦(夫)の歴史や家政婦(夫)紹介所の成り立ち、新しくできた家政士の資格「家政士検定試験」などについて、日本看護家政紹介事業協会で事務局長を務める河津浩安さんに、お話を伺ってきました。

かつては日本に11万人以上いた家政婦(夫)

昭和22年に、労働者の募集・職業紹介・労働者供給などの基本的な枠組みについて定めた法律で、特に職業紹介事業に関するルールについて定めた「職業安定法(職安法)」が制定されました。

これによって、労働者を雇用しようとする求人者が、自分自身、もしくは他人に委託して、仕事を求めている求職者に対し、雇用関係(労働契約)が成立するよう斡旋することができるようになりました。

「当時は戦後なので、負傷した元兵士を自治体でお世話をしなくてはなりませんでした。そのお世話をするのが『派出看護師』です。
派出とは派遣のようなもので、看護師が不足していたために、新たに設けられた仕事です。

さらにその『派出看護師』をもとに、病院という組織の中で、付き添いを主な仕事とする『付添婦』という職種ができました。この『付添婦』は、平成9年に実質的に廃止になるまで、全国で多くの家政婦(夫)が従事していました」

主に地方から出稼ぎに来た女性や、戦争で夫を亡くした妻などが「付添婦」をしていました。

「付添婦」は、病院の患者さん一人ひとりや、2人部屋に1人など、入院患者に付き添い、病院に泊まり込み、24時間身の回りの世話をするのが仕事でした。

平成9年に廃止されるまで、最も多いときで11万人以上の家政婦(夫)が、「付添婦」として病院で働いていましたが、廃止された途端、家政婦(夫)の数は急激に減少しました。

「廃止されると、家政婦(夫)紹介所と家政婦(夫)たちは、2つの顔を持つようになります。紹介所は個人でもでき、家政婦(夫)も資格がなくてもできますが、介護保険事業は法人格を持たないとできませんし、ヘルパーさんも、資格がないとできません。

そこで、個人の家政婦(夫)紹介所は法人格を取り、家政婦(夫)たちにはヘルパーの資格取得を勧めます。そして、各都道府県から指定を受け、介護保険事業者となったのです。

現在約520ある会員紹介所のうち、9割以上は家政婦(夫)の職業紹介と介護保険事業と2つの顔を持っています」

家政婦(夫)のために作られた日本看護家政紹介事業協会

日本看護家政紹介事業協会は、家政婦(夫)と看護師を斡旋する職業紹介事業者と、そこに求職登録している家政婦(夫)と看護師が会員となって構成している内閣府認定の公益社団法人です。

「当協会は、北海道から沖縄まである全国520の紹介所や、家政婦(夫)たち会員によって作られた団体です。例えば、家政婦(夫)が仕事中に、仕事先の高価なものを壊してしまった場合に対処できる保険などを作り、安心して働ける環境を整備してきました」

全国の各紹介所では、家政婦(夫)や看護師を、一般家庭や病院、施設などに斡旋しています。

「現在、会員となっている家政婦(夫)は、20代〜80代まで幅広い年齢の方が現役で働いています。その中で、最も多くを占めているのは60代〜70代の方です。

一番多いときで、全国に1200以上の紹介所がありましたが、現在は半数以下に減っています。約15万人いた家政婦(夫)の数も、現在は2万人程度になりました」

近年、家事代行サービス業が誕生し、そちらで働く方も、利用される方も増えています。

「私たちは公益社団法人という立場であり、紹介所は厚生労働大臣の許可を得ているため、コンプライアンスの遵守が求められる中で、事業運営として創意工夫していかなければなりません。

民間企業と競争するためには、時代に沿って、経営も運営も変えていかないといけません。その一方で、シニアの方たちが安心して働ける、満足できる仕事環境を提供していくことも喫緊課題であると考えています」

70代以上の方の多くは、戦後に「付添婦」を経験していた方もいる、ベテラン家政婦(夫)です。週に2〜3日や、1日あたりの勤務時間を短時間にするなど、高齢の家政婦(夫)たちが働きやすい環境を整えていくことが急がれます。

家政サービスに必要な能力を図る初めての資格「家政士検定試験」

日本看護家政紹介事業協会は、2016年から「家政士検定試験」を実施しています。

「『家政士検定試験』を始めるに至った理由は、大きくは2つあります。

1つは、家政サービスや家事支援業務に関する高い知識や技術を持っている方に『家政士』の資格を与えることによって、家政婦(夫)や介護職など、家政サービス関係職業の専門性を確立し、社会の認知度を高めるため。

2つめは、資格ができることによって、利用者のみなさんがサービスを選択する際の明確な指標となり、安心してサービスを利用することができるようにするためです。

家政婦(夫)の知識や技術を、検定制度によって保証することで、利用者の方にはこれまで以上に安心して家政婦(夫)を活用いただけるようになり、家政婦(夫)側としては、能力を高める意欲が湧き、自信と誇りを持って働くことにつながると考えています」

近年、少子高齢化が進み、高齢夫婦やひとり暮らしの高齢者が増加している一方で、子育て中の女性の労働意欲が高まっています。

こうした中で、介護や支援の必要な高齢者や、子育て中の共働き世帯など、家政サービスに対するニーズが増大し、その内容も多様化してきています。

こうした、社会のニーズに的確に応えることのできるサービスの向上や、人材の育成や確保が強く求められていることを受けて、検定試験をスタートさせました。

すでに平成28年と29年の2回、検定試験を行い、372名の家政士が誕生しています。

「第1回目の受験者の最高年齢は78歳でした。どこの世界でもそうですが、何歳になろうと、技術のある人は強いです。家政婦(夫)は定年がありません。だから一人でも多くのプロフェッショナルを育てたい。これから日本はますます高齢者が増え、間違いなく介護が必要な人が増えます。

働きたい人が自身のライフスタイルに合わせて働ける形を作っていく必要があります。週に2〜3日でも、1日数時間でもいい。年齢を気にせず活躍して欲しいと思います」

同協会は26年前から、東京しごとセンターの「55歳以上の方のための就職支援講習」の「ケアスタッフコース(介護初任者研修)」のカリキュラムの組み立てや、講師の紹介などのサポートをしてきました。

講習を受けた人に対しては、同協会の会員になっている紹介所での採用も行っています。

「家政士検定試験」は、一般の主婦の方も受験できます。

ケアスタッフや家政婦(夫)、「家政士検定試験」に興味を持たれた方は、同協会や、東京しごとセンターのホームページを覗いてみてはいかがでしょうか。

(取材・執筆:旦木 瑞穂)

この記事の取材協力先

日本看護家政紹介事業協会
http://kanka.or.jp/

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