【定年後のお片づけ講座】デジタル資産の整理整頓術

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定年後(引退後)からの「デジタル資産」の整理整頓術

最近は、『整理術』『断捨離』などという言葉が聞かれるように、身の回りを整理整頓する人が増えています。

人は、生活しているうちについついモノを増やしてしまい、なかなか整理整頓する機会をつくりにくいですよね。

一方で、自分が病気になったり、亡くなった後のことを考えると不安になり、「いつかやらないと・・・」と思う方も多いのではないでしょうか。

そこで、このコーナーでは、定年退職や子どもの自立などで環境の変化がおこりやすい定年前後からのお片付けを応援します。

『片付け』をキーワードに各方面の専門家に話を聞き、簡単で上手な整理整頓術について紹介していきたいと思います。

第1回目は、デジタル遺品研究会ルクシーの理事、古田雄介さんに、もしものときに困らない「デジタル資産」の整理整頓術について伺いました。

「デジタル資産」って何?

「デジタル資産」とは、パソコンやスマートフォンなどデジタル機器に保管している写真やメール、アプリなどのデジタル環境を介して実態がつかめるモノのことです。入れ物であるスマートフォンやパソコンも含めてデジタル資産と考えることができるでしょう。

デジタル資産の多くはインターネット上にもあります。例えばFacebookやTwitterなどのSNS類のアカウントの契約や、ブログやコメントなど文章による記録類、インターネット銀行などを利用していれば口座情報、インターネット通販の会員サービスを利用していればその契約など様々です。

スマートフォンやパソコンの中にあるものは、家の中にある自分の持ち物。インターネット上にあるものは、外にある自分の持ち物と考えるとイメージしやすいかもしれません。

例えばスポーツクラブに入っている人は、ロッカーに自分のタオルや靴が置いてありますよね。インターネット上にあるものはそんなイメージです。
デジタル生前整理
万が一あなたが亡くなったとき、「デジタル資産」は「デジタル遺品」になります。

例えば、スポーツジムの契約をしていたことを家族が知らなかったら、会費の自動引き落としが続いてしまいます。もちろん、ロッカーの中のタオルや靴にも気付かれません。もしかしたら、家族へのサプライズプレゼントが隠されているかもしれません。

特に秘密にしていなくても、本人から知らされていないことまで家族が把握することはなかなか大変です。だから生前に整理整頓をして知らせておくことが一番。

もし、生きている間に知られたくないことがあるなら、亡くなった後に気付かれるよう、本人が万が一の時に備えておくことが大切です。

もしものとき「デジタル遺品」はどうなる?

では、スマートフォンやパソコンなどの「デジタル遺品」は、あなたが亡くなった後、どうなるのでしょうか?

結論から言えば、基本的には『そのまま』です。銀行は大抵の場合、遺族の届け出があって初めて本人の死を知り、口座を凍結します。それと同じで、スマートフォンやパソコンも、インターネット上のさまざまなサービスも、持ち主の生死と連動していません。

デジタルの持ち物は外部からは実態が掴みにくいので、よくわからないまま放置されるということがよくあるのが現状。しかし、生活の中でデジタル機器の重要性が高まるにつれて、放っておけないケースが増えています。

もしもの時必要になりがちなデジタル資産

  • インターネットバンクや証券関係などの金融資産
  • 思い出の写真やメール、メッセージ
  • 交友関係に関する情報や連絡先
  • 直近までの仕事のデータ

  • などが欲しい場合、多くの遺族は何とかしてデジタル機器を開こうとします。

    突然死の場合は、直近までやっていた仕事に支障をきたすこともあります。故人の交友関係を知るには、スマホやパソコンを調べる必要があるというパターンも珍しくないでしょう。

    デジタル資産を整理しておかないとこんなリスクも・・・


    葬儀の知らせを送るために交友関係が知りたい場合や、遺影に使うために写真が必要な場合、葬儀までの時間に迫られながら、デジタル機器と格闘する遺族も少なくありません。

    また、遺族が知らない財産が見つかると、遺産分割協議をやり直さなくてはならない場合もあります。ごく稀なケースですが、故人がFXなどの証拠金取引をしていた場合、借金の請求が遺族に届いたり、気付かない間に負債が増える恐れもあります。

    定額制サイトなどの会員になっていた場合は、亡くなった後も、引き落とし先が凍結されるまでは支払いが続くことになります。

    引き落とし先がインターネットバンクの口座の場合、遺族がそれに気づくのは難しいかもしれません。あまり人に知られたくないサイトに登録をしている方は、注意したいところです。

    ただし、闇雲に家族がスマートフォンやパソコンを開くのはおすすめできません。

    端末にロックがかかっている場合、間違ったパスワードを複数回入れると、工場出荷時の状態に初期化される恐れがあります。パスワードらしきメモも手がかりもなく、2〜3回試してだめだった場合は、早めにメーカーや電子機器の専門家に相談した方が良さそうです。

    「デジタル資産」を整理整頓しよう!

    それでは、「死後家族を困らせること」と、「隠しておきたいものが生前に見つかってしまうこと」の両方を防ぐには、どうしたら良いのでしょうか?

    デジタル遺品研究会ルクシーの理事、古田雄介さんはこう語ります。

    「『デジタル遺品』はダイヤルや鍵で開ける金庫のようなものです。スマートフォンやパソコンの鍵にあたるのが、パスワードになります。パスワードが分からないと、スマートフォンやパソコンの中にある写真やインターネット上にある口座、サービスの契約に家族は気付けません。

    だから、スマートフォンやパソコンのパスワードや、お金が絡むネット銀行の口座などがあるなら銀行名など、最低限必要な情報を書いたメモを残しておく。これで対策は十分です。金庫には大抵スペアキーがありますよね。「デジタル遺品」の対策と聞くと何か新しい対策っぽいですが、メモはスペアキーのようなもの。印鑑や紙の通帳類などの大切なものと一緒に保管しておけばOKです。

    ただ、パスワードは1年に1回、変更した方が良いでしょう。

    スマートフォンやパソコンなど、デジタルの持ち物が少し特殊なのは、5年後同じものを使い続けている人があまりいないという点にあります。セキュリティの観点からも、同じパスワードを何年も使い続けるのは問題です。少なくとも買い替えのタイミングでは、パスワードを変えてメモも更新しておくことをオススメします」

    「デジタル遺品」と一般的な遺品の違いは、持ち主以外の人が開いたり中身を把握したりするのが難しいこと。だけど、持ち主が開く鍵さえ用意しておけば、「デジタル遺品」もその他の遺品も同じように扱うことができます。

    万が一あなたが亡くなったとき、まず第一に遺族がやるべきことは、「あなたの財産を把握すること」です。

    だから、あなたの財産がどこにどれだけあるのかがわかりやすい状態になっていれば、「死後家族を困らせること」と、「隠しておきたいものが生前に見つかってしまうこと」の、両方を防ぐことができます。

    『備えあれば憂いなし』。デジタル資産の整理整頓はすぐにできることばかりなので、早速実行してみてはいかがでしょうか。

    この記事の監修者

    デジタル遺品整理古田 古田雄介(ふるた ゆうすけ)
    監修者:『デジタル遺品研究会LxxE(ルクシー)』理事 https://www.lxxe.jp

    (取材・執筆:旦木 瑞穂)

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