【建築家監修】一般住宅で採用される建築工法は?/60歳からのリフォーム建て替えQ&A ③

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定年退職前後になり、長年住み慣れた我が家をふと見渡してみると、あちこち気になるトコロがいっぱい。

お隣さんや友だちも「リフォーム」や「建て替え」したと言っていたけれど、損したとか失敗したなどの話も少なくない。いろいろ聞きたいけれど、どこへ相談したらいいのかわからない…という定年世代の方々におくる「リフォーム・建て替え講座」です。

シリーズ第3弾は、実際に建て替えやリノベーションを考え始めた方々から疑問の声を多くいただく「建築の工法」についてご紹介します。引き続き、建築家の金子智子さんにわかりやすく「Q&A方式」でお答えいただきました。



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一般住宅でよく採用される建築工法とは?

Q. 一般住宅で採用される建築工法について教えて!

A.一般住宅(一戸建て)を建てる場合に採用される工法は、大きく分けて「木造」「鉄骨造」「RC造」「PCパネル工法」があります。

「木造」には、昔から伝わる日本の伝統的な工法「在来工法」と、欧米由来の「2×4枠組工法(ツーバイフォー)」があり、どちらも一戸建てにはよく用いられる工法になります。

<住宅建築で採用される工法>

【木造(在来工法)】
日本の伝統的な建築工法です。在来工法(ざいらいこうほう)または木造軸組構法(もくぞうじくぐみこうほう)と呼びます。柱と梁(はり)で骨組みを組み、斜めに筋交いを入れて補強する工法です。

【木造(2×4枠組工法)】
2×4(ツーバイフォー)枠組工法とは、欧米で生まれた工法になります。板と板で2×4インチの角材をサンドイッチした壁で支える工法です。品質は安定していますが、釘など全ての大きさや間隔が決まっており、在来工法よりも自由度は低めです。

【軽量鉄骨造】
別名プレハブ工法と呼ばれ、骨組みや壁・天井などの部分を工場であらかじめ製作しておき、現場で組み立てて建てる工法のことです。厚み6ミリ未満の鉄骨を使用したものが軽量鉄骨造となります。アパートや小規模店舗の建設に採用される場合が多いです。

【鉄骨造】 厚み6ミリ以上の鉄骨を使用した重量鉄骨造です。柱や梁などの骨組みに鉄骨を用いた構造になります。比較的、設計の自由度が高い。耐火性・耐久性に優れているため、ビルやマンションなどの大規模建築に採用されるケースが多くなります。

【RC造(鉄筋コンクリート構造)】
RCは「Reinforced Concrete=強化されたコンクリート」の意で、鉄筋とコンクリートを用いた工法のことです。鉄筋を組み、型枠を作ってコンクリートを流し込んでつくるため強度や気密性に優れていますが、工費やコストがかかります。

【PCパネル工法(プレキャストコンクリートパネル工法)】
PCパネル工法とは、壁などのコンクリート部材をあらかじめ工場などで製造し、現場へ運んできて組み立てる工法のことです。工場製作や運搬などが必要なので、規格やシステムを持つハウスメーカーでの採用が多くなります。

設計事務所に依頼されて建てる場合は、自由度が高い「木造在来工法」「鉄骨造」「RC造」が主流です。

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Q. それぞれのメリット・デメリットを教えて!

A. わかりやすく一覧表にしてみました。

それぞれのメリット・デメリットは、どんな建物を作りたいかで大きく左右されます。一般的な一戸建ての場合、コストや工期を重要視する方が多い傾向にあります。

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【木造・在来工法】

<メリット>

  • 他の工法よりコストが低い
  • プランニングや開口部の自由度が高いため戸建住宅に向いている
  • 工期も他の後方より短い
  • リノベーション時の増築・間取り変更もしやすい
<デメリット>
  • 遮音性が鉄筋・RC造に比べてかなり劣る
  • 他の工法より耐火性・耐熱性に劣る
  • 他の工法より気密性に劣る

【木造・2×4枠組工法】

<メリット>

  • 木造在来工法より耐震性が高い
  • ハウスメーカーで採用されていることが多い
  • 工期も他の工法より短い
<デメリット>
  • 開口部の位置など規格に制限がある
  • 在来工法と同様、耐火性・耐熱性・気密性に劣る

【軽量鉄骨】

<メリット>

  • 鉄骨作りだが肉厚が薄い部分を使用するためコストが抑えられる
  • アパートなどの規格内建築に使用しやすい
  • ハウスメーカーの規格にも多い
<デメリット>
  • 木造ほどの自由度はない
  • 鉄鋼造ほど強度がない
  • 戸建住宅には不向き

【鉄骨造】

<メリット>

  • 柱の間隔を広くするなど木造より大きな空間が作れる
  • 自由度が高い
  • 耐震性が高い
<デメリット>
  • 接続部などの検討もあり工期がかかる
  • 木造よりコストがかかる
  • RCよりは気密性・耐久性はさがる

【鉄筋コンクリート・RC造】
<メリット>

  • 耐震性、耐火性が高い
  • 遮音性、気密性が高い
  • 躯体品質を確保すれば100年耐久も可能
<デメリット>
  • 養生期間が必要なので工期が長くなる
  • 建設費用も高い
  • 解体費用も高額になりがち
  • メリットを生かすために綿密な計画が必要

【PCパネル工法】

<メリット>

  • 耐震性、耐火性が高い
  • 遮音性、気密性が高い
  • 規格品なので現場で打設するRC造より安定している
<デメリット>
  • 養生期間が必要なので工期が長くなる
  • 建設費用も高い
  • パネル工法は継ぎ目シーリングのメンテナンスが必要
  • 規格品に多いため自由度が少ない傾向
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Q. 建築工法によって税金(固定資産税)は違うの?

A. 違います。基本的に高額な工法・仕様ほど固定資産税も高くなります。

高額な工法・仕様に比例して固定資産税も高くなります。また、高価な資材を使用した場合にも、固定資産税が高くなる傾向があります。

たとえば、無垢床板などの天然素材、純和風の住宅などは評価が高くなります。床暖房やソーラーパネルなどの設備資材も評価が高くなる傾向で、その分だけ固定資産税もあがります。

ですから、耐久性・耐熱性などが高く、建設費用も高いRC造は固定資産税が高くなる傾向にあります。

それぞれの工法でメリットデメリットは一長一短です。どんな家を建てたいのかという希望をもとに、自分にあった工法を選んでいくことがよいでしょう。

( 取材・文章/ライター 田鍋利恵 )


金子智子プロフィール
監修:金子 智子(かねこ さとこ)さん

一級建築士・東京都木造住宅耐震技術者・既存住宅状況調査技術者
  
金子智子建築設計室
一級建築士事務所
(東京都知事登録第49636号)
東京都木造住宅耐震診断事務所
(登録番号443号)

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