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認知症になっても働けるデイサービス「DAYS BLG!」

DAYS BLG!

認知症は、多くの人にとって、いまだ「よくわからないもの」なのではないでしょうか。「よくわからないもの」故に、必要以上に恐れたり、偏見を持ったりしがちです。

もしも親や連れ添いが、自分が認知症になったら・・・。そんな想像するだけでも怖いと感じる人も少なくないでしょう。

そんな中、支えられる側、守られる側と捉えられがちな認知症の人から、仕事や役割など、「自分で選ぶ機会」を奪わないことを大切にしているデイサービスがあります。その名も「DAYS BLG!」。

「よくわからないもの」である認知症を、少しでも「わかろうとする」きっかけになればと思い、「DAYS BLG!はちおうじ」の守谷卓也さんにお話を聞いてきました。

介護されている人が働いて対価をもらえるデイサービス

「DAYS BLG!」は、現在、東京都町田市と八王子市の2拠点にあるデイサービスです。

「BLG」は、「Barriers Life Gathering」の略で、「DAYS BLG!」という名前には、認知症であってもなくても、障害があってもなくても、「生活しづらさ」があることを「障害」と捉え、障壁を少しでも低くして、誰もが安心して暮らせる街づくりを目指し、同じような想いを持つ人たちが集う場所から、日々発信して社会を変えていこう!との意味が込められています。


「DAYS BLG!」を立ち上げたのは、NPO法人「町田市つながりの開」理事長、前田隆行さん。

前田さんは、病院や介護施設で働いてきた中で自分が「おかしい」と感じることは、たとえ業界の常識だとしても変える努力をしてきました。

「勝手に動き回ると危ないから」という理由で付けられている抑制帯を解いたり、必要以上に利用者に手を貸してしまうスタッフに対し、「この場面は手を貸す必要はない」と指摘したり、さらに、介護をされる側には「選択する」という機会がないことに気付き、1日の活動内容を複数用意し、介護をされる側の人たちが選べるようにしました。

あるとき、前田さんが管理していた施設を見学に来た若年性認知症の人から「働きたい」という希望が出されたことをきっかけに、働くことに特化したデイサービスをオープンさせます。
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仕事の種類も増え、軌道に乗ってくると、今度は「労働の対価としてお金がほしい」という意見が出ました。

しかし、当時の介護保険法には、介護を受ける人の労働の対価が認められていません。前田さんは介護を受けている人でも労働の対価が得られるように、若年性認知症のメンバーとともに厚生労働省に掛け合います。

そうして5年経ち、2011年にようやく、「賃金」や「報酬」ではなく有償ボランティアという形で、介護を受ける人の労働対価が認められました。

これを機に、「働いて対価をもらえるデイサービス」を作ろうと考えた前田さんは、2012年に独立。「DAYS BLG!」を立ち上げました。
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一方、現在「DAYS BLG!はちおうじ」の代表を務めている守谷さんは、療養型病院の病棟、介護老人保健施設の介護課長を経て、社会福祉法人のデイサービスの管理者として勤務してきました。

その中で若年性認知症の利用者と出会い、既存のデイサービスでは対応に限界があることを痛感します。

そして2015年12月、若年性認知症の人のために株式会社ウインドミルを設立し、2016年3月に社会参加型デイサービス「HYS Space」を東京都八王子市に立ち上げ、同市で初めて介護保険サービス利用中の有償ボランティア活動を開始しました。

ところが八王子市は、介護を受ける人が働くデイサービスの設立を認めません。そこで守谷さんは、すでに町田市で「DAYS BLG!」を運営していた前田さんに相談し、協力を得ることで、2017年4月に無事「DAYS BLG!はちおうじ」をオープンすることができたのでした。

自分のことは自分で決める

「DAYS BLG!」はスタッフも利用者も関係なく、全員「メンバーさん」と呼びます。八王子では、利用するメンバーさんは現在20名の登録があり、月曜日から土曜日まで1日〜6日間、希望の曜日に通っています。

「みなさん『ここに来たい』という自分の意志で通っている方ばかりです。高齢の方はなかなか自分で調べることができないので、ここを知ったきっかけは家族かもしれませんが、必ず1人ひとりとじっくりお話をして、本当にここに通いたいのか確認をしています」

「DAYS BLG!」は、「自分のことは自分で決める」デイサービスです。当たり前のことようですが、従来型のデイサービスでは、お昼ごはんの献立や1日のスケジュールがすでに決められていることが多く、選択できることが少ないのです。

「私たちは普通に生活していると、選ぶことの連続です。しかし、認知症という診断を受けたときから、急に生活に制限が設けられるのはおかしいですよね?病気だからといって特別扱いするのではなく、誰もが選択できる社会が当たり前なんです」
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「DAYS BLG!」では、昼ごはんを食べに行くか、買いに行くかを自分で決めます。1日のスケジュールも、午前、午後、帰りの3回、全員でミーティングを開き、用意された選択肢の中からやりたいことを自分で選びます。

「私たちの念頭に、『dementia friendly community 〜認知症にやさしい社会づくり〜』というキーワードがあって、これから認知症になるかもしれない私たちも含めて、失敗してもストレスにならない社会にしていこうという取り組みを実践しています」

これは元々、世界のキーワードでしたが、現在は日本のキーワードにもなってます。

「例えばここではポスティングの仕事をしていますが、同じチラシを2つ入れてしまったり、間違えてインターホンを押してしまったりと、時々失敗はします。もちろんきちんと謝りますが、それくらいの失敗はいいと思いませんか?失敗してはいけないと思うから苦しくなるんです」

BLG!の周りのお宅には、予め一軒一軒メンバーさんが挨拶しています。街の交番にも認知症であることを伝え、「万が一迷子になったらよろしくお願いします」と声をかけています。

また、「DAYS BLG!はちおうじ」は小中学校のそばの住宅街にあり、午後から駄菓子屋を開いています。

学校が終わった子どもたちが駄菓子を買いに来ると、メンバーさんが店番をしています。そこで、「おっちゃんは認知症っていう病気だからみんなの顔を覚えられないんだよ。道も覚えられないから、もし道で迷っていたら助けてね」という話をすることもあるそうです。

「知り合うきっかけがないと、街で困っている高齢者を見かけても声をかけづらいですよね。だから駄菓子屋以外にも、子どもたちと紙芝居を作り、小学校などで読み聞かせることで、認知症という病気について伝える活動もしています。まずはこの場所を、高齢者にとっても子どもにとっても居心地いい空間にして、街や社会に広げていきたいと考えています」

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偏見のない社会へ

今回初めて「DAYS BLG!はちおうじ」を訪れて、メンバーさんの元気さや明るさに驚きました。

「よく、『本当に認知症なんですか?』と言われるメンバーさんも少なくありません。多分、重度で辛いときの認知症の方のイメージがあるんだと思います。認知症もいろいろです。40代50代で発症する人もいますし、70代80代の方もいます。それを全部一括りで考えている人が多いんです」

認知症というものがよくわからないために、腫れ物に触るみたいに接してしまいがちです。

「『ちょっと物忘れしちゃうけど、あとはほとんどみんなと変わらないよ』というのがみなさんの気持ちです。40代50代で認知症になった方は、まだまだ働かなくてはならないのに会社に居辛くなって仕事を辞めてしまうケースも少なくありません。社会から偏見がなくなれば、認知症でも高齢者でもどんな人でも仕事が続けられて、みんな明るく過ごせるはずです」

認知症や高齢者は「こういうもの」とイメージが凝り固まっているから、必要以上に特別視してしまうのかもしれません。

「凝り固まったイメージ=偏見」が無くなれば、認知症や高齢者の人が感じる窮屈さが軽減し、認知症の人は居辛さを感じずに働き続けられて、高齢者は定年を気にせずに済むようになるかもしれません。

「DAYS BLG!はちおうじ」に通う中田さんは、54歳で認知症と診断されたとき、まだ一番下のお子さんが大学生でした。会社は、中田さんのポジションも仕事量も給料も変えませんでしたが、中田さんは居辛くなって、自ら退職の道を選びました。

「会社でも行政でも、誰かが『仕事量や働く時間を少し減らしましょう。お給料は少し減るかもしれないけど、障害年金が出るから補填できますよ』といったアドバイスやサポートができれば、認知症になってもそれまでの生活が維持できます。しかし現状は知らない人が多いため、居場所を失い、辞めてしまう人が少なくないんです」
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仕事はお金を稼ぐ手段というだけではなく、自分自身の生きがいや、誰かの役に立つことで社会貢献にもなっています。年齢や病気を理由に仕事を奪うことは、生きがいまで奪うことになる場合もあります。

「多くの人は、診断を受けてから何らかの支援を受けるまで、空白の期間ができます。スコットランドでは、その期間に医療、介護、行政、すべてをサポートしてくれるリンクワーカーがつきます。しかし日本にはなく、あるのは認知症の人と家族、地域住民、専門職等の誰もが参加できて集う場である『認知症カフェ』だけ。でも認知症カフェは、空白の期間の出口の部分にあたり、入口はまだ整備が進んでいないのが現状です。『DAYS BLG!はちおうじ』では、中田さんを中心に、認知症の人による認知症の人のための相談室『わすれもの相談室』で『認知症かもしれない』と不安を抱える人の相談を受け、認知症になった人をサポートする活動を始めています」

取材をしている間も、メンバーさんたちは懐かしの歌謡曲を歌ったり、曲にまつわる思い出話をしたり。明るい笑い声が絶えませんでした。

「1日3回のミーティングのうち、最後は『今日1日何したっけ?』という質問をします。必ずしも思い出さなくてもいいんですが、ヒントを出しながらみんなで考えます」
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認知症は、脳を使わないと進行する可能性があるので、考えるリハビリでもあります。

「辛い時間の人もいるかもしれませんが、一緒に考えるのが、BLG!では自然なこと。相手の言葉を聞いて、自分も発言する対話は、自分の気持ちを話すことに結びつきます。言葉に詰まっても助けず待つ。質問して終わりではなく、質問した責任として、一緒に考えるから仲間として認識される。だから、明るい雰囲気になるんだと思います。心だけどうにかしようと思っても、自発的に身体を動かさないと心は動きません。当たり前のことなんですが、多くのデイサービスではしていない。『認知症になって辛いよ』という話になるときもありますが、ほとんど今日みたいな感じですよ」

守谷さんは、「自分が認知症になったときに通いたいデイサービスを作ろうとしているだけ」と笑いました。

まだ認知症ではない親やパートナー。そして私たち自身も、もしかしたら将来、認知症になるかもしれません。

認知症になったときに本当に怖いのは、「それまでと違った目で見られること」「特別扱いされること」ではないでしょうか。

自分が認知症になったことだけでもショックなのに、それまで普通に接してくれていた人たちから、急に接し方を変えられることは、更に辛いことだと思います。

そういった偏見のない社会にするためにも正しく「認知症を知る」ことは、今認知症である人たちはもちろん、これから認知症になるかもしれない私たちにとっても、とても大切なことだと気が付きました。